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けんこう一番 三遊亭兼好独演会 よみうり大手町ホール 4月6日(土)

今日も贔屓の三遊亭兼好師匠の独演会です。でも考えてみるとかなり久しぶり。ここ1年落語鑑賞は月イチくらいのペースにまで落ちてたのでした。そして久しぶりに4日の鈴本から2日あけて今日のよみうり大手町ホールでした。

地下鉄の大手町駅は広い。東京メトロ4路線が地下でつながって、どこへでも移動できる。そして今どこにいるかがわかりにくい。探してるうちに読売新聞の親の入り口を見つけ、ここが正解でした。エスカレータを上がると会場前ロビーに辿り着きました。

入場して兼好師匠変わりないかな?なんて思いながら見てると、弟子が一人増えた様子です。ずいぶん背の高い前座が舞台をうろうろしている。来ている浴衣がつんつるてん。調べたら三遊亭しゅりけんという名前が出てきました。いい男じゃないですか。そうか、けん玉に始まって、じゃんけんの次はしゅりけんと来ましたか。ぜひ今度聴きたい!

そうこうしてるうちに開演が近づきました。幕が開いて開口一番はいきなり兼好師匠の登場です。陽気も良くなり、外は桜満開。年号も令和と決まり、兼好師匠の次女が大学卒業したとのことです。

そういえば兼好師匠は女房子持ちで会津藩から出てきて、三遊亭好楽師匠に入門したんですね。それから20年経過したのでした。そんないい陽気にふさわしい演目でまず『千早振る』でご機嫌伺いでした。

続いては二番弟子の三遊亭じゃんけんさん。この人は前座なりたてのほやほやの時から見てましたが、1年ぶりくらいになるのかな。前座は1年も見ないと飛躍的に成長しているものですが、この人はどうかな。確かに見違えるほどに上手くなってました。演目は『道具屋』ですが、なんだか口調が師匠によく似てきた。同じようなリズムで語ってゆきます。

そしてまた兼好師匠の二席目。マクラも短く入った話は『百川』でした。兼好師匠のこの噺、まだ二つ目の好二郎の時に聴いてます。でもあの時と比べてずいぶん演出の趣向が変わったようです。

当時はまだ圓生から継承してきた流儀のままに演じていたように思うのだが、今日は現代人にもわかりやすいようにという配慮でしょうか、古臭い部分をとことん切り落としてました。四神剣の話も出てこない、単なる祭り道具。そして鴨池先生の薬籠は薬箱でした。何だか違う「百川」を聴いてるみたい。でも百兵衛さんの「うっしぃ」はそのままでした。やっぱり「百川」は「百川」だった。

仲入りがあって後半はゲスト出演のリコーダーとギターの演奏会から始まりました。桜満開の花見の喧騒のような空気から、爽やかな草原の空気に入れ替わったようです。

リコーダーは日比健治郎さん、ギターは伊東福雄さんです。日比さんと兼好師匠は20年来の友人とのことでした。演目は『パリの空の下』『シェルブールの雨傘』など、映画のテーマ曲。そしてポールマッカートニー作『ミシェール』。それからリコーダーの起源の話。昔の英国で小鳥に歌を教えたしいうエピソードをもとに一曲。これは何の鳥ですか?その鳥は「ウソ」だったのです。ホントですか???

そしてメンデルスゾーンの『歌の翼』、そして最後が滝廉太郎の『荒城の月』で締めくくりました。主題をリコーダー、ギターの伊藤さんは伴奏に徹していました。そしてまた落語の空気に戻り、兼好師匠の三席目です。

出囃子は師匠お気に入りの「さんげさんげ」。唄入りの出囃子というのも珍しいものがあります。そして始まったのが『井戸の茶碗』でした。最後を締めくくる格調高い根多です。

これはごく正統的な「井戸の茶碗」でした。このような噺は、噺自体が重いのであまり開削や独自のくすぐりなども入れにくいのかもしれません。笑い箇所も少なく淡々と進み、だんだん心が豊かになってくような演出でした。

てなことで今日の独演会も終わりました。このような会には必ず演目表が貼り出されてますが、今日の演目表にも趣向が凝らされてました。もともと兼好師匠は漫画イラストが得意な人ですが、ここにもイラストを入れてたではないですか。まさに「けんこう一番」面目躍如の独演会でした。

次回は7月12日(金)に国立演芸場だそうです。一般発売前の特別枠ということで、早くもチケットを購入したのでした。

鈴本演芸場4月上席夜の部 隅田川馬石主任 4月4日(木)

ようやく年号も令和と決まり、桜も満開になりました。どうも人々は外でぱぁっと花を咲かせたい気分ですが、さてこんな時期の寄席の方はいかに。

今日はまたまた鈴本演芸場の夜席にお邪魔しました。今日のトリは隅田川馬石師匠です。でももともとこの上席の主任は蜃気楼龍玉師匠です。今日は休演でした。でも馬石師匠も贔屓の噺家さんなので、あたしにとっては問題なし。何だかいい高座を聴かせてもらえそうな予感です。

龍玉さんのHPコピーを見せて割引木戸銭で入場して、いつもの席に着いたが、やはり会場は寂しい。こういう時の観客は一箇所にまとまるのではなく、前後右左と適度な距離を空けて埋まってゆくものです。みんな友達がいないんだなぁ。

さて開演、開口一番は前座で林家彦星さん。調べると福島県出身で林家正雀師匠のお弟子さんとのことです。淡々とした語り口は、正雀師匠譲りなのかな。そうではなくとも前座にとって師匠は絶対的な存在で、似てくるのは仕方のないことでしょう。演目は『道具屋』で、出てくる与太郎も天衣無縫な馬鹿ではなく、頭のネジが1本2本足りないような馬鹿でした。

続いては桃月庵こはくさん。名前を見れば師匠は誰かは明白ですね。桃月庵白酒師匠。もう白酒師匠には3人もお弟子さんがいるんですね。みんな名前は雛祭りにちなんだよう名前になってます。そしてこはくさんは一番弟子のようですが今は二つ目。ちょっと変わったユニークな語り口です。演目は『代脈』で実に楽しそうに演じていました。

次がダーク広和さんの手品。今日も初めての根多を見せてくれました。片手でのカードの広げ方のうんちく。最近黙って演じるのではなく、いろいろ解説が入ります。

寄席の手品は喋りも大切なんですね。そしてこれまで手品の根多を300種も作ってきたということです。手品師としてこの数字、多いのか少ないのかはよくわからないが、でも毎回も違う根多を見せてくれるということは、多いのでしょうね。

そしてまた落語に戻って、金原亭馬治さん。ご隠居、美味い酒を飲ませろ!『子ほめ』が始まりました。最近「子ほめ」というと前座ばかりですが、たまに真打以上の「子ほめ」を聴くと、なぜか新鮮な気分です。で、馬治さんのはというと、ずいぶん粘っこい「子ほめ」ですね。でもやはり前座と比べてしまうと、格の違いがあります。やはり真打は真打というものでした。

続いても落語で橘家文蔵師匠です。登場して会場をぐるっと見回して、後ろに座ってる人を前に詰めたら、2列で済んでしまう。芸人さんにとって、客の入りは生活の糧。その辛さよくわかります。

でも客は意地悪なもの。こういう日を狙って鈴本に足を運ぶのです。こういう時に限って、年に一度聴けるかどうかの名演技に出会えるかもしれないというのが、これまでの経験値です。でも今日の文蔵師匠は早い上がりで持ち時間も限られてるんでしょう。軽い噺しかできないはず。演目は『目薬』、結構卑猥な話でした。

次がぺぺ桜井さんのギター漫談。何とも賑やかな紋様のジャケットを着てギターを抱えて出てきました。JRの駅の発車オルゴール。駅によってみんな違います。それを一通り聞かせてくれました。

再び落語に戻って柳家喬太郎師匠です。今や人気者でなかなかチケットも取れなくなってきたキョンキョンだが、こんな鈴本の寄席にも出演してるのです。ところで近くで見るとずいぶんダイエットしたようですね。一頃この人太り過ぎでヤバいよ、と心配したこともあったがもう安心して見ていて大丈夫ですよね。

そして演目は『宮戸川』でした。何でも呑み込んでしまうウワバミのような叔父さんの手にかかって、半ちゃんお花のカップル一丁上がり。でもこの先台本が破れての言い回しはありませんでした。

そして仲入り前は五街道雲助師匠。やはり上席の主任の蜃気楼龍玉師匠も、今日のトリの隅田川馬石師匠も、この雲助一門で、師匠はその引き立て役に徹しています。そして今日の演目は『辰巳の辻占』でした。

この噺、2月に国立演芸場の鹿芝居の根多だったのだが、普段あまり聞くことがありません。なぜなのかな?面白い面白くないというよりも、聞き手にとって話の筋道をイメージしにくいところがあるようです。なのでボーッ聞いてるのではなく、少し構えて聴いたのでした。

仲入りがあって後半になる前に、前座が出てきてお客への注意事項の朗読。いつもの携帯の電源を切ってください云々です。そして幕が開いて漫才のホームランの登場。この二人は筋書きのあるネタというよりもかなりアドリブで話すようです。

そして今日の客席には三列目中央に若いノリのいい男女のグループが来ていたので、いじり始めました。そして時計を見て時間ということで下りていったのです。

次は落語に戻って、今日は柳家甚語楼師匠です。始めたのが『猫と金魚』「猫金」です。この噺は今は亡き橘家圓蔵師匠のお気に入りでお手の物だったのが想い出されます。とにかくこの噺の聴かせどころは、ピントの狂った番頭さんのやりとり。圓蔵師匠のは何とも言えないをかしさがあったが、今日の甚吾楼師匠も負けてはいません。ナンセンスさを競っていました。

そしてトリ前のヒザは林家正楽師匠の紙切り芸。まずはいつものとおり「相合傘」でのご機嫌伺いで始まりました。そして客席からのお題は、「桜並木」と「端午の節句」でした。

最近聞いた話で、紙切り芸人さんにとって一番悩ましいお題は、「101匹わんちゃん」と「AKB48」だそうな。確かにこれを切っていると、年を取ってしまいそうです。今日は「欅坂46」をリクエストしようかと思ってたが、言い出す勇気はありませんでした。

そして今日のトリは隅田川馬石師匠です。本来の主任の蜃気楼龍玉師匠は弟弟子で、今日は休演。どこか別のところでお座敷がかかってるのでしょうね。会場を見渡すと客の入りはちょうどいいとのことです。そのココロが何とも切ないものでした。

要は客の入りが本来の主任の龍玉師匠より多いと、龍玉師匠にとって何のための主任なのかということになる。逆に大幅に少ないと、代演とはいえこんなのをトリに起用した意味がないということになる。少し少ないのが丁度良いそうです。でもあたしは密かに期待していた。今日の馬石師匠は記憶に残る名演技を聴かせてくれるのでは、と。

始まったのが恋煩いの話。最初は「崇徳院」かなと思ってたがそうではない。搗き米屋の若旦那が、吉原の傾城の花魁に恋をした、ということで『幾世餅』でした。この噺は古今亭の噺の代表格。まさに得意芸のつぼにはまったような熱い演技です。比較的クールだと思ってた馬石師匠が、ここまで熱のこもった演技を聴かせてくれたというのも嬉しい誤算でした。

やはり平日の鈴本演芸場の夜席には福がある。パラパラと空席の多い会場で聴く記憶に残る名演技。何度も何度も寄席に足を運ばなくては出会うことのできない幸運。今日はそんな気分でした。

三遊亭鳳樂独演会 国立演芸場 3月29日(金)

もう3月も月末日、とは言ってもあと2日あるが休日なので、今日が実質の月末日です。そして多くの企業の期末日でもあります。さらに何と言っても平成最後の落語会なのでした。

そんな日なのですが、会場の国立演芸場に着くとロビーには人が溢れていました。でも考えてみると鳳樂師匠のファンは年配者が多いので、もう期末日月末日なんて関係ない人が大部分なのかもしれません。そういう自分も半分そうでした。

すぐに開場で入場して着いた席は中央ブロックの前から3列目。前に福禄寿様さえ来なければいい席です。そして待つこと暫し開演です。開口一番は三遊亭鳳月さんでした。

鳳樂師匠最後の弟子ということで、二つ目になった今でも開口一番を務めて、高座返しもしなくてはなりません。でも羽織は着て上がってきました。白っぽい薄色の羽織ですが、何だか徹夜明けみたい。ヘアスタイル変えた?でもやはりこの人はもともとステージ慣れしていたもので、落ち着いた口調で携帯の電源を切ってくださいと、言ったあと泥棒の話に話題を振ってゆきました。

でも泥棒の話といいながら、出てきたのは八っあんと大家さん、何の話かな?そのうちに造作のない部屋に絵を描いてもらう。『だくだく』でした。

続いては三遊亭鳳志さん。焼き餅をこんがり焼くところから入った噺は、『悋気の独楽』でした。この人も真打になってもう10年は経ってるのでは。そろそろ飛躍する姿を見たいですね。何と言っても同郷の噺家さんなので、親近感も違います。

そして「正札付」の出囃子が鳴って三遊亭鳳楽師匠の登場です。今日は二席の根多は根多出しされています。まずは『町内の若い衆』。仲入り後の「鼠穴」が長いので、まずは軽い根多でご機嫌伺いでした。

そこで10分の仲入りがあり、2階のロビーに出ると相変わらず打ち上げの受付をしていました。今日は参加せずに帰る予定でしたが、受付簿を覗くと結構集まってるようです。参加したい気も半々なのだが、来る前に腹ごしらえしてしまったのでした。

そして鳳樂師匠の二席目の『鼠穴』が始まりました。まずは師匠の着物に注目。茶色の結城は圓生大師匠のお内儀さんの着物を仕立て直したとのことでした。人情噺を演る時によく着用するとのことです。今日の「鼠穴」の根多に合わせて用意したものでしょう。

江戸名物の伊勢屋稲荷に犬の糞というだけあって、伊勢屋という屋号はあちこちに沢山あった。あまり沢山あって紛らわしいから、主人の名前と組み合わせて、伊勢Xなんというのも現れる。伊勢丹はその典型だそうです。

そしてもう一つの江戸の名物は火事です。「鼠穴」はお店と火事の話です。さらにもう一つ仕込まなくてはならないのが、夢は五臓の疲れ。全くの死語で、「鼠穴」の話の中でしか聞いたことのない謂れですが、この噺のサゲがわかるためにはこれを仕込んでおかなくてはならないのです。

田舎での親の身代を継いだ兄弟の話、弟の竹次郎が身を粉にして成功した後に兄を訪ねて飲み明かし。泊まった寝床で見た長〜い夢。その夢の中に出てきたのが江戸名物の火事でした。一気に財を失い、娘を吉原に身売りして受け取った50両を掏摸に盗み取られ、吾妻橋から身を投げようとして目が覚めた。夢は土蔵の疲れという塩梅でした。

やはりこのような噺にこそ鳳樂師匠の持ち味を存分に楽しめます。ということで平成最後の落語会を締めくくっていただきました。

弥生の一人看板 蜃気楼龍玉 国立演芸場 3月13日(水)

今日の公演はちょっと変わった趣向です。かねてより三遊亭圓朝の作品の口演にこだわりを持っている蜃気楼龍玉さんが、『緑林門松竹(みどりのはやしかどのまつたけ)』という演目を通し口演で語ります。

五街道雲助一門にはユニークな高座名とユニークな芸風の人が目立ちますが、蜃気楼龍玉さんはその最たるもの。圓朝作の長講に挑戦をする中、今日聴かせてくれるのが圓朝初期の作品である「緑林門松竹」です。

今まで聴いたことのない噺でしたが、調べるとこれを高座に掛けていたのは昭和の名人と言われた林家彦六師、六代目三遊亭圓生師が双璧だったとのことです。先日亡くなった桂歌丸師匠も手掛けてたのでは?とググってみたが出てきませんでした。残念。

開場前に国立演芸場に着くと入場待ちの人で1階ロビーは人で溢れていました。龍玉さんはまだテレビにも出てこない中堅真打のはずだが、もうしっかりと自分のファンを掴んでるようです。それもミーハー的な落語ファンではなく、年配者が多いのです。

入場して着いた席は最後部から1列前。でも国立演芸場はそんなに広い会場ではないので、演者の顔の見える距離です。もっとも前列に福禄寿が来なければの話ですが。そして会場は7、8割の入りです。

しかしいつもの定席とは何か雰囲気が違う、下座からのお囃子は聞こえてこない。静かなものです。前座もいないようです。やがて二番太鼓が鳴って、すぐに開演でした。

今日は龍玉さんが仲入りを挟んで前半後半、約2時間たっぷりの独り語りです。開口一番の前座も出てこず、いきなり龍玉さんの本番が始まりました。そして侍が刀を手にした試し切りをしたくてたまらなくなるという話。マクラから何やら物騒な話が出てきます。

そうです今日の噺は実におどろおどろしいもので、殺し、殺し、殺しの連続なのでした。解説によれば龍玉さん芸の力でどれだけ人が殺せるかという挑戦だそうです。そして芸が生ぬるいと聴いてる観客にとって殺しが、殺しのように見えないとのこと。そして本ネタでは刀ではなく、「蒼白譽石(そうはくよせき)」という恐ろしい毒薬が次々と人を殺すのでした。

とにかくこの噺、登場人物に善人はいません。出てくる人物全てに悪人の所業。まあ圓朝作の長講はおどろおどろしいものが多いのだが、これは極め付きと言えましょう。でもここまで悪人が次々登場すると、物語としては面白くなってきます。

この話はこれまで演ずる人によって、圓朝の原作からかなり改編されたり、演題もずいぶんいじられたようです。そして今回のも本田久作氏による脚色とあるので、龍玉さんに合わせて話も構成されてるようです。

前半仲入りまでは「新助市譽石を奪う」の話が続き、医者の秀英の妾のおすわと息子と駆け落ちをして、その二人から仇討ちを返り討ちにして、手入れを受ける場面で終わりました。さあ、新助市はどうなったのでしょうか。。。

仲入りの後は場面が変わって、女占い師としてまたかのお関が登場します。そしてそのお関が惚れた小僧平吉が後半の主人公。そして無事生き延びた新助市も登場してきましたが、お関に毒殺され60両奪われる。

さらに「平吉天城に乗り込む」の場面もありました。ここで天城の道場に乗り込んで、またしても譽石を使って一門を含めて大量殺人。最後は平吉もお関に毒殺されて、お関も自分で譽石を舐めて死ぬというサゲでした。

でも調べるとこの話はまだ先があって、原作では平吉もお関もまだ生きていて「田舎の惨劇」という場で常陸国大宝へ行き、そこでまた譽石を使って村民を大量に殺害。

最後はこの二人服毒自殺という筋書きとのことですが、ここまで演ると2時間では収まりきれないのでしょう。この噺の原作は圓朝の口述速記のみということなので、以後に口演する演者にとっては改変の自由度の高い作品なのかもしれません。

聴いているといつの間にか、演じている龍玉さんが見えなくなって、圓朝ワールドに包まれるような気分でした。救いがない話、でも面白い。こんな今日の国立演芸場、蜃気楼龍玉独り語りのひと時でした。

如月の三枚看板 喬太郎・文蔵・扇辰 銀座ブロツサム中央会館 2月20日(火)

どうも最近落語会を追いかけるのが面倒になってきて、入船亭扇辰師匠の席が多くなってしまった。それに伴って橘家文蔵師匠にもよくお目にかかります。今日はそれに加えて柳家喬太郎師匠でした。場所は銀座の外れの銀座ブロッサム中央会館です。

ここは何度か来ています。そして今日の落語会は毎年1回ずつで10年続いているそうです。開場時刻前に来たらやたら人が待っています。

最近このお三方人気が上がって、集客も好調のようです。入場するとこの二階席のあるホール(定員900名)がほぼ満席になる勢いです。凄い!

一階の中程の席に着いたら直前の席だけが空いている、でも何となく嫌な予感。どんな人が座るのか?座高の低い弁天様ならいいのだが、座高の高い福禄寿様みたいなのが来たら最悪と思ってたら、来たではないですか、福禄寿様だ!周りの人と比べても10センチ頭が飛び出てるのです。

そして開演で開口一番は前座の橘家門朗さん。なかなかよく通る声です。調べたら橘家文蔵師匠のお弟子さんで、まだ文左衛門時代に入門していたとのことです。演目は『道灌』でした。

続いては柳家喬太郎師匠。最近特に活躍が目立ちます。また古典と創作と二刀流もこの人の特徴、さて今日は。東京駅で出会ったチンピラの話から入っていったのが極道の話でした。

聞いたことのない話で、終演後の演目表には『小政の生い立ち』とありました。調べるともともとは清水次郎長外伝の講談根多で、落語としてこれを演るのは喬太郎師匠だけのようです。ちょっとキョンキョンとしては毛色の違った噺ですね。

次が入船亭扇辰師匠です。いつも扇辰師匠を聴いてるのは小ホールのような狭い会場が多かったのですが、これだけ広い会場では声のトーンが違います。大きく響かせるような調子で話していました。

昔のインチキな見世物小屋の話をいくつか。この見世物小屋というと、期待するのが源頼朝公のご幼少の頃の髑髏だが、これは出てきませんでした。

さてそこから入ったのが『一つ目の国』。江戸から北に百里ってぇと、栃木県の宇都宮を通り越した那須のあたりなのかな、ここに一つ目の国がありました。何となく落語っぽい夢のある噺でした。昔の志ん生の録音が残ってますね。

さて15分の仲入りで、残るのは橘家文蔵師匠です。出てきてから客席を見渡したら今日は大入り!実に嬉しそうです。気合も入ることでしょう。

武士鰹大名小路生鰯茶店紫火消錦絵火事に喧嘩に中っ腹伊勢屋稲荷に犬の糞。から始まって江戸の名物の中の火事にまつわる話。「富久」「火事息子」などいくつかあるが、どうやら『鼠穴』のようです。

最近文蔵師匠に出会う時には人情話が多い。昨年末も「芝浜」を聴かせてもらいました。しんみりとした時間が流れます。お店の旦那である兄と、3年間頑張って3戸前の蔵と間口5間半の店を開いた弟の竹次郎。兄の店に行って一緒に飲み崩れた後の竹次郎の長〜い夢。悪夢。広い会場もすっかり文蔵ワールドに浸っていた感がありました。今となってはわかりにくい「夢は土蔵の疲れ」もそのままでした。

ハネてから会場の外に出るのがこれが大変。900人のホールがほぼ満席だったから、人の波をかきわけて出なくてはなりません。またその前に貼り出された演目表の写真を撮らないと、ブログが書けないのです。人だかりの中、何とか無事に撮ることができました。

国立演芸場2月中席 鹿芝居「嘘か誠恋の辻占」2月11日(月)

寒い!立春を過ぎてそろそろ春の気配と思ってたら、超号泣の寒波襲来です。今日は国立演芸場2月中席恒例の鹿芝居です。今日は初日なのでした。さて何かハプニングの起きそうな予感です。

今日は三連休最終日で月曜だが休日。そのせいか満員御礼が出てました。めでたい事です。そして今日の鹿芝居の演目は「嘘か誠恋の辻占」ということで、「辰巳の辻占」という噺を脚色したものということです。

国立演芸場に着くと人が多い!何となくざわざわしています。そしてやがて開演。開口一番は林家彦星さんでした。名前からしていい男のようなイメージだが、出てきた彦星さん。イメージ通りでした。声もなかなかいい。演目は『牛ほめ』でした。

続いては金原亭馬久さん。この人は体も大きく存在感がある。前座の時から記憶に残ってましたが、着々と芸歴を重ねて腕を上げてるのでしょう。今日の演目は『狸札』でした。

次が金原亭馬治さん。今日は後から鹿芝居があるので、落語の方は軽目です。演目は『真田小僧』でした。

続いて蝶花楼馬楽師匠。あれ、少しスリムになったかな。でもマクラは健康の話ではなく酒の話。そこから入ったのが『替わり目』でした。

そして一度幕が降りて再び開くと漫才のハル&ヨノ??何ということはない、古今亭菊春さんと金原亭世之介さんのコントでした。今日は落語の出番はないそうです。

まずは世之介さんが紐の手品。寄席の手品でアサダ二世さんがよく演ってる根多です。その後菊春さんが歌舞伎の「助六」に扮して登場。大向こうから「成田屋」!の声がかかりました。手品と助六の取り合わせ、誰がどう見てもミスマッチなアンバランスなコンビでした。

続いては林家正雀師匠。今日の演目は『松山鏡』でした。越後の松山村の出来事で、いかにも田舎っぽく決めてくれました。

そして仲入り前最後はは金原亭馬生師匠で、演目は『稽古屋』。途中鳴物も入って艶っぽく聴かせてくれたのでした。

そこで仲入りになる前に獅子舞があります。演ずるのが先のハル&ヨノのコンビ。やはりこれがあるから落語を演ってる暇はないのです。また獅子舞と鹿芝居はセットとして組むのが慣例とのことと言ってました。

やがて二匹の獅子は客席へ下りて、満員の会場を回って祝儀をねだります。祝儀を上げた後、肩の凝る人は肩、腰の痛い人は腰、足の悪い人は足、頭の悪い人は頭を噛んでもらうと万病が治る。

多くの人は頭を噛んでもらってました。誰もがもっと頭が良くなりたい???

仲入りがあっていよいよ鹿芝居の始まり、舞台の幕が歌舞伎の定式幕に変わりました。拍子木が入って幕が開きました。今日の演目は『嘘か誠恋の辻占』。

鹿芝居といえば、「らくだ」「芝浜」「文七元結」などが定番ですが、今日は『辰巳の辻占』の話、あまり聴くことの少ない話です。そもそも落語というのは登場人物が少ないので、そのまま芝居にしても一座のメンバー全員に役は回ってきません。そのために話を膨らませる必要があるのです。

この鹿芝居は竹の屋すずめの名前で正雀師匠が脚色しているようです。この一座の馬生師匠と正雀師匠の門下の芸人さんの特徴を生かした役を作って、オリジナルの噺根多を脚色してるようでした。

でもだいたいパターンは決まってます。やはり主役は馬生師匠で伊達男の若旦那。正雀師匠は女型。でも今日は娘役専門の林家彦丸さんが来てないので、正雀師匠直々に辰巳の花魁になってました。そうやって本番に入っていったのはよいのですが、今日は初日でした。想定外の連続です。

滑ってひっくりかえって鬘が脱げたりセリフが飛んだり、でもそこは落語家の本領発揮で、失敗は笑いのアドリブで乗り越えてゆきます。転んでも只起きない芸人魂です。でもそれでいいのだ。

終わり良ければすべて良し。笑って楽しんで終わればそれで上々なのでした。そして最後は舞台からの手拭いを撒いて、三本締めで終わりました。ああ、今年も手拭いを取ることができなかった。。。。

アトリエそら豆落語会 柳亭市弥独演会6 1月27日(日)

今日の落語会会場のアトリエそら豆は、小田急沿線の祖師ヶ谷大蔵の商店街の中にあります。その商店街は「ウルトラマン商店街」として異彩を放っています。

その一角にあるカフェ。そして柳亭市弥さんも祖師ヶ谷在住ということで、典型的な近所落語会なのです。集まってくる人も多くは近隣の住人ですが、ここのママさんの人脈で東京の反対側から来る人もいます。

開場時刻に駆けつけたところ、予約を入れるのを忘れていた。まさに飛び入りだったのだが、キャンセルが出ているということで歓迎して入れていただきました。

既に店のテーブルを寄せて高座も設えてあります。もう落語会は何度も主催しているので慣れたものです。そして市弥さんも現れました。

今日は既に前のお座敷を終えてとの事です。観客も続々入店して20人程度の会場は満席です。子供もいる。まさに近所のお父さんお母さん、お爺さんお婆さん、そして子供たち。典型的な町内イベントの雰囲気の中、開演時刻の17時を回り、ラジカセの出囃子が鳴って市弥さんが上がってきました。

まずは少し高いところから会場を見回して、今日は子供さんが多いですね。と、学校落語の乗りで始めました。子供に喜んでもらえるのが与太郎の出てくる話で、始まったのが『牛ほめ』でした。まあ確かに、穴が隠れて屁の用心は喜びますね。でも秋葉さまのお札ってイメージできるかな?

続けて二席目は『千早振る』。これは子供向きであるようなないような。最近の子供は百人一首やるのかな?知ったかぶりでこれほどの講釈ができるのかな、という位長い講釈をしてました。端折らないでフルセットで聴かせてくれたのかもしれません。

そこで仲入りが入ってもう一席あります。今度は少し大きな根多を入れてくるのでしょう。それにしても今日は寒い。寒い日にふさわしい『二番煎じ』を入れてきました。

江戸時代の町内夜回りとその見張り番の話です。番屋での酒と猪鍋が出てきたときには時刻は18時を回ってました。そして後ろの調理場では名物「市弥弁当」の仕込みの音と、いい匂いが漂ってきます。そこで市弥さん扇を箸に見立てて目の前の子供に食べさせたつもり。子供もそれに乗ってたべたつもり。見ているこちらもますます腹が減ってきました。

その中で気になったのが、町内見回り係の一人の黒川先生。何度も出てきます。後からわかったのは、会場に来ている実在の人物でした。打ち上げの弁当タイムの時は隣に座っておられました。

そんなこんなでいじりいじられの「二番煎じ」も楽しく終わり、店内を現状復帰していよいよ「市弥弁当」が食べられる打ち上げです。なぜ「市弥弁当」なのか?それは市弥さんの好きな唐揚げが多く入ってるとのことです。

ワンコインの飲み物を頼んで、初笑いの乾杯してあとは市弥さんとの歓談です。聞けば出囃子を鳴らしてくれた人が生の落語が初めてとの事。よく出囃子の鳴らし方わかったな。

最近は落語のCDやDVDが多く出回ってるので、録音も含めて落語は初めてという人はほとんどいないでしょう。CDやDVDならば、今は亡き昭和の名人の芸を見ることもできます。志ん生、文楽、圓生、志ん朝、・・・何でもござれ。

でも声を大にして言いたい。やはり落語は生が一番です。演者と同じ空間で同じ空気を吸ってこそ、観客も落語の世界に参加できるのです。そんな雰囲気で今日のアトリエそら豆落語会は終わりました。

三遊亭鳳樂独演会 お江戸日本橋亭 1月18日(金)

最近いささか落語会への足が遠のいて、今日が今年の初笑いでした。もう正月はとっくの昔に過ぎてるというのに。でも贔屓の三遊亭鳳樂師匠の席だから、周りは知ってる人が何人もいるという塩梅です。

鳳樂師匠が定席を日暮里サニーホールからお江戸日本橋亭に移してから初めての参加です。客席数は少なくなったがほぼ満席になって、何となく気分も温かいものがあります。

やがて開演で開口一番は三遊亭鳳月さん。そういえばこの人も二つ目になってたのでした。羽織を纏って出てきました。しかし鳳樂師匠の最後の弟子ということで、前座業から卒業できない。

今日の席でもめくりと高座返しをしていました。でもそれは修行というよりも、裏方作業を楽しみながら務めてるという余裕。この人は根っからの愛されキャラなのでしょう。演目は『権兵衛狸』でした。

続いては三遊亭鳳志さん。寒い季節に心と体が暖まる話です、『ふぐ鍋』。この噺は現代感覚と照らし合わせると、どうしてこんなに毒を怖がるのかという疑問が湧いてきます。でもフグの毒は油断禁物、過去に歌舞伎役者の八代目坂東三津五郎師が当たって亡くなったというような事故もあります。

今は調理技術が進んで何でもないように食べられる時代だが、毒があることには変わりないのです。

続いては三遊亭圓福さん。この人は鳳樂門下ではなく、先代圓樂門下です。なぜかめくりがありません。そこで自分で名乗らなくてはならない羽目になってます。

演目は『大安売り』、相撲噺です。今両国国技館では大相撲初場所中で、稀勢の里引退の話題の真っ最中だが、この話は江戸時代、上方相撲に出張してた力士の連敗物語でした。実に牧歌的な話です。一年を二十日で暮らすいい男の時代だったのだが、それと比べると今の大相撲は大変です。年六場所では怪我をしたら治る暇もないですね。

さて仲入り前は三遊亭鳳樂師匠の一席目です。お楽しみとなってたので何が出てくるか。『天災』でした。ここに出てくるのが、山崎町三光新道の紅羅坊名丸先生です。心学の先生というが、「心学」って何?それは江戸時代の庶民向け倫理学に相当するようなものだったようです。

そこで教えられたのが「堪忍の袋をつねに首にかけ破れたら縫え破れたら縫え」。なのでした。およそ現代感覚と合わないにもかかわらず演る人の多い噺。それを鳳樂師匠が演じれば、目の前に広がるのは、昔のお江戸日本橋。そういえば山崎町三光新道は、この会場から歩いて5分のところでした。

仲入りがあって中の舞の出囃子。根多出ししていた『柳田格之進』が始まりました。鳳樂師匠、紋付袴の格調高い装いで登場です。マクラも短く本根多に入ってゆきました。

これは笑いの少ない人情噺。彦根藩士の柳田格之進が両替商万屋源兵衛と、静かな奥の間で碁を打つ光景が浮かんできます。そしてこの噺も現代感覚では理解に苦しむものがある。特に格之進の娘のお絹が親の濡れ衣を被って吉原へ身を売る、なんという犠牲的精神はちょっと考えられません。

そして最後はそのお絹が万屋に身請けされて、番頭との縁組という結末。落語の人情噺には時代の庶民感覚というものが反映されるが、この「柳田格之進」も代表格です。江戸時代というのは人情溢れる良い時代だった。そんな時代感覚を感じさせてくれた今日の席でした。

今日は開演が18時だったのでハネるのも早い。20時半にはお江戸日本橋亭を離れて、久しぶりに鳳樂師匠の打ち上げです。でも今は新年会の真っ盛りで花金。近所の会場が予約できなかったということで、湯島まで歩きました。そこでもう一席盛り上がったのでした。

鳳樂師匠の打ち上げはいつも日本酒がついて回ります。今日も新年のために用意された新酒、それも生酒で18度というかなり強烈な代物。すっかりいい気持ちになった初笑いでした。

鈴本演芸場12月中席夜の部 橘家文蔵師匠の「芝浜」12月19日(水)

日本人、いや江戸っ子が暮になると聴きたくなるのが「第九」と「芝浜」。まあ第九はこのプログでは番外なので、やはり注目は「芝浜」なんです。

最近JR山手線の品川と田町の間の新駅の名前が決まって、それが「高輪ゲートウェイ」ですって!なんと無粋な!落語ファンとして許せない!!みんな「芝浜駅」を期待していたんですよ。そんな癪な思いは別として、今上野の鈴本演芸場では、日替わり演者による「芝浜」が上演されています。そして今日は橘家文蔵師匠の出番。それを目当てに行きました。

さて開場時刻前に着くともうすっかり日が暮れてました。今は一年中で一番日暮れの早い時期、1日があっという間に過ぎてゆきます。そんな鈴本演芸場前には入場待ちの行列ができてました。今日はかなり客の入りが良さそうです。

入場していつもの2列目の右側に陣取りました。前座の開口一番の始まることろには、前の席はかなり埋まっていました。出演者も気合が入ることでしょう。そして三遊亭あおもりさんが上がってきました。

もうこの人もかなり前から見ているます。その名の通り青森県出身ということですが、江戸弁がかなり板についてきた感があります。そろそろ二つ目になる時期でしょう。演目は『黄金の大黒』でした。

次が古今亭始さん。やはり前座が終わって二つ目以上が出てくると、芸歴の違いを感じます。落ち着いた雰囲気で、演目は『二人癖』でした。

続いてはダーク広和さん。赤いジャケットを着て登場です。そしていつもと違う手品を見せてくれました。スカーフをつないだに結んだり、球が指の間に出たり引っ込んだり。そして紐が繋がったり切れたり。なんということはない、古〜〜い手品で、160年前に考案されたものだそうでした。

次が柳家小ゑん師匠。今日はマクラから絶好調で、会場は笑いの嵐です。そしてこの人は創作専科で今日の話は。演題はわからないが、家のリフォームの話でした。

そして続々出てくるのが鈴々舎馬るこさん。蕎麦の話から入ったのがおなじみ『時そば』でした。この人は古典根多をかなりいじるのだが、今日は標準通り?でもずいぶん早口で、初めの人物はすぐ終わってしまいました。

でも次のボーッと生きてる人物の時に、いじり始めました。今日は舌の回転も、いつもにも増して好調でした。

さらに春風亭一朝師匠。いっちょう懸命聞かせてくれたのが『壷算』でした。いつも思うのだがこの噺は実によく出来ている。聞いてる方も騙されてしまう話です。

次は色物で翁家社中の江戸太神楽。ちょっと息をつくひと時です。今日は和助さんと小花さんの二人で登場。いつもの傘回し、五階茶碗、土瓶、そしてナイフの取り分けでした。

そして仲入り前は講談、宝井琴調先生です。この時期に講談といえば、忠臣蔵や赤穂浪士にまつわる話。今日は『赤穂義士外伝~小田小右衛門』でした。初めて聴く話だが、改めて忠臣蔵というのは裾野の広い物語です。仲入りがあってから再び幕が開きました。

そういえば今日出演予定のホンキートンクが病気で休演とありました。その代演者が出てくるはずと思ってたら、出てきたのは柳家小菊さんでした。寄席の彩りです。

まずは鈴本、いや吉原へご案内〜〜、そしてさのさ酒尽くし、寄席の大作三部作、蛙、蛇、ナメクジ。気前よく、そして品川甚句で締めてくれました。

続いてが柳家甚語楼師匠。今日はもともとの出演順序の入れ替えもあって、本当はもっと早い上がりだったのがこの順序で出てきました。あんまり時間もなかったのかな、演目は『金明竹』。あの仲買の弥一の使いの口上を、一気に一息で息継ぎもせず語り尽くしてました。

そしてトリ前は林家楽一さんの紙切りです。何だか高座に上がる時の歩き方からお辞儀まで、師匠そのままのような感じです。まずは横綱の土俵入りでご機嫌伺いです。

切りながら話してたのが、幼稚園などでの出張公演で出てくるリクエストが、象さん、キリンさん、カバさん・・・。なんだかこの人が子供の前で紙を切ってるのが目に浮かんできたのでした。あとは「大谷翔平」「立川談志」。こんなのしか出てこないんだったら、「象さん」をリクエストしたらよかったと後悔しました。

いよいよ最後は橘家文蔵師匠の『芝浜』です。後ろを振り返ると客席も7割8割埋まってたようです。登場と同時に「待ってました」「待ってました」と怒鳴る声。文蔵師匠苦笑い。でも演者にとって掛け声は嬉しいということです。

マクラも短く本根多が始まりました。ずいぶん声を抑えてる。いつものド迫力のイメージとは違います。しっとりと語っています。会場もシーンと聴き入ってました。

「芝浜」という噺は、現代のドラマと比べると抑揚の乏しい噺。でもなぜこんなに人気があるのか。やはり歴代の名人たちの名演が残されて、ファンもそこから入ってゆくからなのかな。また江戸の人情豊かな庶民感覚にホッとさせられるところがあります。冬の寒風の中で心が暖ったまってきます。

そんなことを考えながら聞いていると、やがてサゲの「夢になるといけない」、で終わりました。

鈴本の芝浜週間もこれが最後で、予定を見ると明日は「柳田格之進」。2018年の今年も残すところあと2週間もありません。

「扇辰日和」入船亭扇辰独演会 なかの芸能小劇場 12月2日(日)

今日は先輩から誘われての落語会です。でも「扇辰日和」の名のごとく贔屓の入船亭扇辰師匠の独演会です。考えてみたらこのところ大好きな落語も1ヶ月お留守にしていたのでした。

なかの芸能小劇場は何度も来ていたのだが、久しぶりに中野駅に着いたら歩道橋などができていて、北口近辺は大きく様変わりしていました。会場の小劇場へゆく道順は、北口広場から中野サンモール商店街を通ると、雨に濡れずにたどり着けます。でも今日は天気は晴れで、傘の心配もない。中野通りの反対側から会場へ入りました。ここの会場での落語会ではいつも整理券が発行されます。今日は誘ってくれた先輩があらかじめ取得したものを渡してくれました。

開場時刻になるとその整理券番号順に入場して、あとは自由席で好きな場所に陣取ります。小劇場の名の通り、収容末も少ない会場なので、最後列でも出演者の顔が見えなくなるなんということはありません。今日はちょうど会場の真ん中あたりに陣取りました。

さて開演で開口一番は柳亭市坊さんです。名前を見れば柳亭市馬師匠の一門であることは一目瞭然です。愛想の良い好感を持てる前座さんですね。演目は『子ほめ』。八五郎がご隠居のところに飛び込んで、只の酒を飲ませろという時の表情が凄かった。

続いて扇辰師匠の一席目です。番組表ではお楽しみとなっていたので何が出てくるか。ここ1ヶ月寄席の出番がなかったとのこと。そうでしょう海の向こうまでドサ廻りをしていたのですから。そして今月はいきなり鈴本の夜席でのトリを務めるなどなど。今日もこの席が終わったら、鈴本演芸場が待ってるのでしょう。

そして本根多はあまり聴いたことのない話です。田舎の若旦那の恋煩い。相手は糸屋の娘お糸さん。その雪の降りしきる夜に、その逢瀬を色男に横取りされてしまう。その色男はお祭り佐七ということで、演題は『お祭り佐七』?でもこの噺は『雪とん』という演題で語られているものでした。

「お祭り佐七」という噺の一部ということですが、この佐七という色男は、まだ他にも多くのエピソードがあります。歌舞伎にもなっているものでした。

仲入りがあってゲストのストレート松浦さんのジャグリング。ジャグリングは日本式にいうと太神楽です。同じ曲技でも太神楽は色々伝統的な作法があるようだが、ジャグリングは演者の自由。今日も色々見せてくれました。

まずは白緑黄の3個のお手玉。その3個を自由時代に操る。次が糸の上を踊り回る中国独楽。次が色の変わる3つのリング。次がくっ付いたり離れたりの3つの箱。次が踊る棒で、傘を空中で踊らせる。さらにおわん回し、桶回し、その桶がだんだん大きくなる。そして最後が道路工事現場で見かける三角コーンを、2本の棒で踊らせるという具合です。演者のストレート松浦さん、もう汗びっしょりでした。診ている方も手に汗握るという塩梅でした。

そして最後が扇辰師匠に二席目、今度は根多出しされていた『江戸の夢』、これは劇作家の宇野信夫さんが、あの三遊亭圓生師のために書き下ろした作品です。

マクラはこの作品には著作権がかかっているので、宇野信夫さんのご子息の管理している著作権の使用許諾を得るところから始まりました。ご子息といってももうかなりのご高齢で、コンタクトを取るのに随分苦労をしたとのことでした。でも幸いに口演の許諾を得て今日この席という具合です。そしてこの話は若い演者には扱いづらい話ということを言ってました。

人情話とは言っても煎茶の世界の茶人が出てくる、非常に格調高い話です。演者にも人生を積み重ねた風格というものが求められます。そういう扇辰師匠も、もう円熟期を迎えてると言えるのです。

話は淡々と静かに進みました。会場なんとも言えない静寂感。たしかにいくら上手くても若手では、なかなかこの雰囲気は出せないかもしれません。そして気になるのが往年の三遊亭圓生師。学生時代に見た圓生師の残像が、扇辰師匠に重なって見えてきました。

そう言えば扇辰師匠は三遊亭鳳樂師匠からいろいろな噺を教わってきたと聞いたが、鳳樂師匠を通して圓生の芸を伝承したのかなとも思ってしまったのです。そしてサゲが、「氏(宇治)は争えないものだ」。。。これは一捻り考えないとわからないオチですね。会場も一捻り考えた間をおいて、拍手となったのでした。

今日の席がハネたあとは、お誘いを受けた先輩方との席が待っていました。でも話題は落語から鉄道へ。実はその先輩方は皆鉄ちゃんの端くれでした。世の中、「落」と「鉄」を兼ねてる人って案外沢山いるんです。