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鈴本演芸場9月上席夜の部 柳亭市馬主任 9月5日(水)

台風襲来で予定が狂い、暇になった今日。ならば落語を聴きにゆこうと鈴本へ向かいました。今日のトリは柳亭市馬師匠です。久しぶりの市馬師匠、どんな噺を聴かせてくれるのかな。

台風一過でまだ風が吹き荒れている。東京でもこんな強風が吹いているから、台風の通り過ぎた関西を襲った暴風は、ちょっと想像し難いものがあります。

でもこんな日って、どのくらいの客が寄席に足を運ぶのかな。今日の鈴本もちょっと客足が鈍い気がします。トリが市馬師匠というのに。更に言えば暴風雨の最中だった昨日の夜はどうだったのかな?4人?興味ある人は、是非そういう日に来てください、ということです。

いつもの上手側2列目に席を確保して待つこと暫し、開演です。開口一番は三遊亭ぐんまさん。三遊亭白鳥師匠の二番弟子だそうです。

もうかなり高座慣れをしていて、ウケを意識しながら演技してました。演目は『初天神』。金坊のイメージの重なる顔つきで駄々をこねるのが真に迫ってる。飴を買ってもらえないところで、天を仰いで、「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」息の続く限り叫んで、会場から拍手。見せ場まで用意してくれました。

続いては柳亭市弥さん。先日もそら豆で会ったばかりでした。客席から軽く手を振ったのですが空振りだった。そして今日のの演目は『手紙無筆』でした。でもよく声が通りますね。

そして次が鏡味仙三郎社中の江戸太神楽。仙三郎さん、仙志郎さん、仙成さんの三人で出てきました。いつもの傘回し、五階茶碗、そして吉右衛門じゃない仙三郎さんの土瓶回し。そして笠の取り分けで締めてました。

次が五明楼玉の輔師匠の登場で、演目は『宗論』。落語で宗教を扱うというのはかなり際どい話なのでは、といつも思いつつ笑って聞いてしまう「宗論」でした。

続いて柳家小ゑん師匠。この人はいつも創作で勝負しているので、聞いていて演題がわかりません。部屋のリフォームが出てきたので演題は「リフォーム」なのかなと思って調べたが、わかりませんでした。

さて続いてはペペ桜井さん。ギター漫談です。駅のチャイムシリーズなどなど。

次が春風亭正朝師匠。正統派の古典落語ということで、『蔵前駕籠』でした。吉原の土手八丁が出てきて「蜘蛛駕籠」かなと思ったが、「蔵前駕籠」でした。この噺、久しぶりに聴きました。

続いて仲入り前、古今亭菊之丞師匠です。寄せ通いを初めて10年になりますが、いつもどこかでこの人の高座を見ている。でも10年前と比べて、明らかに年輪を重ねてきていますね。名前は菊之丞のままですが。そして今日の演目は『親子酒』でした。

仲入りに入ってトイレタイム。その時に楽屋から出てきた柳亭市弥さんと顔を合わせた。「観にきたよ!」「あっ、あんなもんです!」。実は彼の今日の「手紙無筆」は、先日のそら豆で演っていた演目なのでした。もしそれを想い出しての一言としたら、彼もなかなかですね。

そしてトイレから戻ると、募金をしてました。今日の北海道の地震へのチャリティということで、こちらも少し協力したのでした。

仲入り後は、ホンキートンクの漫才。最近鈴本でよく見かけるのだが、この二人、今乗りに乗ってますね。喋りだけでなく、息のぴったり合ったコントもなかなか見せます。

続いて柳家喬の助さん。名前は知ってたが見るのは初めてかもしれません。結構声がでかい。「XXXXX続きはWebで。。。」なんてマクラで言ってたが、演目は『宮戸川』。そしてこのセリフをサゲで使ってたのです。「台本が破れて」というのもちょっと今の時代には古臭いので。

そしてトリ前は林家正楽師匠の紙切り。もうあまり持ち時間がないようです。客席からのリクエストも、後を引かないような取り方でした。切ってくれたものは爪や煎餅の袋ではありません。相合傘、内緒話、稲刈りでした。

いよいよあと一席。トリの柳亭市馬師匠です。「待ってました!」の一声がかかります。そういえば今日はずいぶん早い上がりから「待ってました!」がかかってたような。

マクラは短く名工の話。そして飛騨高山と言えば左甚五郎。左甚五郎の噺はいくつかあるが、今日は東下りの鳴海宿。と言えば『竹の水仙』です。改編もない極く伝統的な「竹の水仙」でした。

市馬師匠、なんだか少し痩せたみたい。これまでの筋肉質感がない。体調は大丈夫なのかな。ちょっと気になった高座でした。

ということで21時前。今日の鈴本行脚は終わりました。

祖師ヶ谷大蔵で柳亭市弥独演会 アトリエそら豆 8月26日(日)

この落語会はいつも土曜で、土曜になかなか体の空かない我が身にとって参加できないことが多かった。でも今回は日曜ということで参加したのでした。会場のアトリエそら豆は小田急線の祖師ヶ谷大蔵の有名なウルトラマン商店街の中にあります。その女将さんは世田谷区の創業塾で知り合った人なのでした。何と言っても世田谷区の中で行われる落語会、できるならば足を運びたいところでした。

柳亭市弥さんは柳亭市馬師匠門下の二つ目。最近若い二つ目の露出度が上がり、何人かの売れっ子二つ目はあちこちで見かけます。また有線放送やラジオ番組で、名前の知ってる二つ目さんに出会います、

市弥さんもその一人、前座時代にはあちこの寄席や落語会で見かけました。前座の時から印象の強い人は、その後もスクスク伸びてゆくようです。そして今日もその進化を楽しめるのかもしれません。

蒸し暑〜〜い夕刻です。祖師ヶ谷大蔵の駅を降りで真っ直ぐアトリエそら豆に向かって、入口の戸を開けると、もう営業中ではなく、只今準備中状態です。そして市弥さんもなにやら忙しそうに準備してましたが、開演40分前だというのに高座の設営も何もできていません。そこで女将さんから設営作業の猫の手として駆り出されました。今日は申し込み人数は少ないそうでした。

やがて人も入ってきて17時。少し遅れ気味で開演しました。でもあと二組が来ていません。でもこういう落語会に遅刻したら、演者からうんといじられるんですよ。それを知ってのことでしょうね。

市弥さんもそのつもりでいます。いろいろ地方巡業などのマクラを喋りながら、遅刻者が入ってくるのを待っている。やがて飛んで火に入る夏の虫が3人入って来た。いらっしゃいませ、どうぞ最前列の席へ、と市弥さん座布団の上からご案内です。でもまだあと一組が来ていない。

すると女将さんが1時間間違えてるからまだ来ないよと言ったので、市弥さんようやく羽織を脱ぎました。入った本根多は『手紙無筆』でした。

マクラの時の話し方と、本根多に入ってからの話し方が違う。なにやらどっしりした江戸弁が板についてきたようです。聞いたら生まれ育ちも現在の居住地もこの近所なので、さほど違和感はないのでしょう。

まず一席終わって続けて二席目です。今度は与太郎の出てくる噺。叔父さんから働けと言われて、叔父さんの仕事をやってみると言えば、「道具屋」?、いやそうではない、『かぼちゃ屋』でした。

まあ、「手紙無筆」も「かぼちゃ屋」も、今は見ることもできない江戸の風物。150年以上前の江戸の風物。これを聞き手にタイムスリップした気分にさせるのも落語家の腕の見せ所。今はそれの腕を磨く時期なのでしょう。

短い仲入りがあってあと一席。遅刻者を待ってのマクラが長かったので、今度はマクラ短く入った噺は『甲府い』でした。人情話なので笑いは少ない。今度はしっとりと聴かせなくてはなりません。二つ目にとってはこのような噺は、師匠や兄さん達との共演の場ではできないことでしょう。こういう一人会こそ、腕試しの場となるものと思われます。

観客もしっかり聞き入っていました。たっぷり聴かせて今日の独演会は終わりました。さあ後は打ち上げで名物「市弥弁当」が出てきます。

「市弥弁当」・・・聞いたら単なる幕の内弁当に「市弥弁当」と名付けたものではないそうです。ここには市弥さんの好きなものが入ってる。それは何かと言えば、唐揚げとマカロニサラダだそうでした。すでに高座の真正面にある調理場でも、弁当の用意ができてます。

でもその前に高座を片付けて、テーブルや椅子を元の食堂の配置に戻さなくてはなりません。ここでもまた女将さんの号令一下、猫の手を貸しました。

そしてみんなが席に着いたら、ワンドリンクと例の「市弥弁当」が運ばれてきました。市弥さん、着替えないで客席に入ってきた。いいのかな。そしてその「市弥弁当」を胸に掲げて、ワンショットサービスです。もちろんツーショットもOK。そして各テーブルを回りながら、精一杯のサービスをしてくれました。その「市弥弁当」結構ボリュームがあって美味かったですよ。

てな塩梅で、「真夏の蒸し暑い夜の落語会」でした。市弥さん本当にお疲れ様。今後のご活躍を期待します。

酒米「亀の尾」を使った美味い酒

贔屓の柳家小満ん師匠のエッセイ「小満んのご馳走」を読んでいたら、妙に心に引っかかる一節がありました。それは新潟県の久須美酒造の醸造する「亀の翁」という銘柄を絶賛しているのです。

「獺祭」のような大量販売の銘柄ではない、希少銘柄です。でも小満ん師匠が推薦するなら、何か際立った特徴があるのではと、その久須美酒造を訪ねたこともありました。残念ながら予約なしに行って見学したり、その場で購入できるものではありませんでした。そこで長岡市内にある酒販店で求めてみました。

そのオリジナル銘柄の「亀の翁」は720mlで9千円代。ちょっと手が出ない、と思ってたら、その酒販店の店主が、「亀の翁」と同じ酒米を使って、同じ杜氏が別の酒蔵で作ったものがあるということ。純米大吟醸で価格も1900円だったので迷うことなく購入したのでした。正月に飲んだら実に美味かった。

その時はそれで終わったのだが、あれから「亀の翁」が頭から離れない。調べるうちに同じ酒米「亀の尾」を使った銘柄はいろいろあり、新潟県だけでなく、東北地方一円の酒蔵で作られていることがわかりました。

「亀の尾」はもともとは山形県が起源の米の品種で、寒さには強いが、害虫に弱い一方化学肥料が使えないなど、栽培が難しいということで、一時は米農家から見向きもされなくなった。

ところがこの米を使った酒が美味いという伝説を頼りに、久須美酒造が酒米として栽培を始め、それを使った銘柄として「亀の翁」は製品化されたそうです。さらにその米を他県の酒蔵にも伝えて、これを使った銘柄がいくつも誕生するという経緯がありました。

そして東京でも、通販抜きで手に入ることがわかったのです。渋谷のデパ地下で、酒コーナーの店員に聞いてみると、最近ずいぶん入荷することが多くなったと言っていました。そこで購入したのが「亀仙人」。山形県の銘柄で、「亀の尾」100%精米歩合42%の純米大吟醸。そして生酒。生酒だから冷蔵保管しなくては、味が変質してしまう。1升瓶から冷蔵庫に入るボトルに移したのでした。

以前、二子玉川のデパ地下で宮城県の「阿部勘」という銘柄を購入したことがあったが、「亀の尾」を原材料とした酒には共通の風味があります。酒米として有名な「山田錦」とは明らかに風味が違う。美味いだけでなく、何か強烈な自己主張を感じるのでした。

美味い日本酒の銘柄は沢山ある。「浦霞」「一ノ蔵」「鮎政宗」「妙高山」「八海山」「天狗舞」「獺祭」・・・。でも「亀の尾」の酒は、何か日本酒党として、これが求める酒のゴールなのだという感触を抱いたのでした。

「亀の尾」の由緒

第63回むぎんぼう寄席 夢吟坊三宿本店 7月10日(火)

久しぶりのむぎんぼう寄席、今日は主催者の笑福亭笑助さんが山形から帰ってきている日です。久しぶりとはいうものの、実は5月のに参加するつもりだったのが、仕事の関係の飲み会に誘われてパスしてしまいました。ところがその日に笑福亭鶴瓶師匠がサプライズ参加してたのです。う〜ん残念、と地団駄踏みました。

今日こそはと思って夢吟坊に来ましたが、残念ながら前回のサプライズはなさそうです。代わりと言ったら失礼になりますが、今日は三遊亭圓丸師匠が招待されていました。いつもは若手がゲスト参加するのだが、今日はお古い師匠に来てもらってるんですね。さて何を聴かせてくれるのかとチラシを見たが、今日は根多出しはありませんでした。

少し遅めに着いたのですぐに開演です。まずは笑助さんの一席目、山形の夏の風物詩から始まりました。いえ、花笠音頭ではありません、蚊戦ってぇか、とにかく虫が多いそうです。アパートの階段、きっと外階段でしょう。蜘蛛の巣を避けるため阿波踊りスタイルで下りていく。

そんな話です。でも蒸し暑さは東京にも劣らないようです。そんな楽しい山形ライフ存分に楽しみつつ4年が過ぎ、今年秋に次の人に譲って山形を離れるそうです。

そして夏の食べ物は鰻。始まったのが『うなぎや』でした。笑助さんが演じるから当然上方版の「うなぎや」でしたが、筋書きは江戸版と同じです。

でも今や鰻は高嶺の花。日本鰻は絶滅危惧種と聞いてるので、そんな鰻を食べること自体に後ろめたさを感じる今日この頃。この噺を聴くのも、笑いながらもちょっと複雑な気持ちになりました。

さて続いて今日の客演の三遊亭圓丸師匠です。この人は落語芸術協会なので、これまであまり聴く機会がありませんでした。でも新宿末廣亭とか池袋演芸場などでよくトリをとってるので、今度はこの人目当てでゆかなくっちゃ。

高座に上がって見えた風景は、最前列の席に誰も座ってない。それにしてもいつもは最前列ど真ん中に陣取る人が必ずいたのに、今日はなぜかいないのです。でも後ろ半分はほぼ埋まっている。客席から見ていてもちょっと奇妙な雰囲気です。

そんな雰囲気を睨みながら、続いても夏の噺です。仲むつましい夫婦のかみさんが病でこの先がない。『三年目』でした。しっとりと聴かせてくれる噺です。

見ると客席の同じ列の反対側に小さな女の子と一緒に来ているお母さん。子供も一生懸命聞いてるが、悋気の話、わかるかなぁ?圓丸師匠もちょっと気になってるようです。でもたっぷり聴かせてくれました。

仲入りがあって再び笑助さんの登場です。いつもはここで笑助手拭い争奪のジャンケンが始まるが、持って上がって来たのは、なんと洗剤のスプレーボトルです。そのラベルには笑助さんの似顔が書いてあり、その名は「落クリン」。ラックリンと読むそうで、そのキャッチコピーは、「落語も洗剤もオチが肝心」。何でも山形で親しくなって、笑助さんの活動に協賛してくれている会社の取り扱い製品に、こんな洒落を組み込んだそうです。きっと本当によく落ちるんでしょうね。

そして始まったのがやはり夏の噺。植木屋さん、といえば『青菜』、もちろん上方版の「青菜」です。でも微妙に江戸版とは味付けが違います。江戸は醤油味、上方は塩味、こんな違いか。

ここで出てくる酒が「柳蔭(やなぎかげ)」、上方ではこれだけで通るのだが、江戸では「本直し」と呼んだそうです。そのためか江戸版では植木屋さんが飲んでから、これは「直し」ですねと聞き返している。

調べて見ると焼酎と味醂を半々に割った酒で、夏に冷やして飲んだとあります。聞いただけで甘ったるそうで、酒通にはどんなものかなと疑問が湧くのだが、酔狂な酒蔵が復活販売していました。もう売り切れのようだが落語ファンなら一度やって見たい。ならば今流行の黒霧島と本味醂を混ぜたらどうなるかな。てな塩梅で義経に先おこされ、弁慶が出て来て終わりました。

この落語会の一つの特徴は後払い。木戸銭の額は決めずに観客各々の心尽くし次第なのです。これじゃあ儲からないだろうなと思いつつも、封筒に入れて受付に渡したのでした。そういえば一度、財布を忘れてその木戸銭すら出せなかったことがありました。あとで埋め合わせはしたのですが。

歌舞伎鑑賞教室「日本振袖始」国立劇場 7月8日(日)

毎年6月と7月の国立劇場では、歌舞伎鑑賞教室が行われています。これは中学生、高校生、大学生、社会人、そして外国人向けの歌舞伎のPRを兼ねた公演です。入場料も安く有名演者の歌舞伎が観れるので、大変お得感があります。但し一幕だけなのですが。

更に言えば歌舞伎のイロハから若手の役者さんが説明してくれるから、イヤホンガイドなどなくてもよくわかります。なのでこの時期になると必ず1回は観に行くのでした。

昨日までの雨がようやく収まり、と言っても東京ではさほど降らなかったが、岐阜県と関西以西は大変な水害です。被災地の人たちの無事を祈らずに入られません。そんな中国立劇場に足を運んだのでした。

ここではも鑑賞教室としての対象者が優先で、一般客はその後ろの席になります。その対象者が中学生高校生の場合は、入場前から賑やかそのものです。そして席に着いても劇場の空間全体がガ〜〜〜と唸ってるのです。そして今日はというと、少なくとも中高生ではない。社会人なのかな?いつもより若い人たちが多いように思われました。

今月の演目は『日本振袖始』。でもこの演題から実際の物語は全く想像ができません。実は素戔嗚尊の八岐の大蛇退治の話なのです。それがなぜ「日本振袖始」なのか?誰もが抱く疑問なので、前半の「解説歌舞伎のみかた」の中でしっかり説明がありました。

開演で場内が一時真っ暗になって、花道のスッポンから現れたのは、坂東新悟(大和屋)さん。今日は稲田姫役で出てきます。いつもの通り歌舞伎用語の説明に入りました。舞台装置の説明、スッポン、花道、揚幕、定式幕・・でも今日は回り舞台の装置などは省略していました。

上手下手や黒御簾などの説明をしてから、舞台裏から小鼓、大太鼓、笛が出てきて実演。ツケが鳴って立ち回りの実演のあとに見得を切る。その後女方の演じ方の実演。そして義太夫節の竹本が出てきました。そこで一趣向。

昔の難解な言葉回しを、あえて現代の言葉に置き換えて、竹本が唸って聞かせてくれたのです。よくわかったのだが何だか言葉が軽くなったような感じ。そして場外乱闘のような立ち回りを見せてくれました。

そのあと今日の演目の『日本振袖始』の解説に入りました。これは「古事記」「日本書紀」に記されている題材を元に、近松門左衛門が書き上げた作品です。その演題の意味とは、八岐の大蛇の生贄に出された稲田姫の袖に、名剣一振りを忍ばせていた事が、「振袖」の起源ということです。

この中で八岐の大蛇とは八つの首を持つ大蛇、これをどのように表現するかが最大の見どころとして観てほしいということで、前半の「解説歌舞伎のみかた」が終わりました。幕間です。
20分の幕間の後、「日本振袖始・出雲国簸の川川上の場」ここは八岐の大蛇の棲む窟に8つの瓶が置かれていました。八岐の大蛇の8つの頭が各々酒を飲む想定です。そして室の中には生贄の稲田姫がいました。

そしてスッポンから岩長姫(中村時蔵/萬屋)が出てきて、8つの瓶に入った酒に誘われて、それを飲みながら酔って行く場面がしばらく続き、そのうち次第に大蛇の本性を現して、稲田姫に襲いかかってひと呑みにしてしまうのでした。

次に素戔嗚尊(中村錦之助/萬屋)が威勢よく現れて、八岐の大蛇との一騎打ちです。そこに現れたのが、中村時蔵さん演ずる八岐の大蛇本体に加えて、分身が七人現れて合計8人。

ここでは激しい立ち回りというよりも、八岐の大蛇と素戔嗚尊を加えた9人で、さまざまな形を決めて行くような演出です。そして形を決める瞬間に、大向こうから「よろずや!」の掛け声が入りました。

そして稲田姫が隠し持った名剣で大蛇の背中を破って現れ、7人の大蛇の分身も討たれて消えて、本体だけが残りました。でもそこで討たれて倒れるのではなく、素戔嗚尊と稲田姫も加えて、3人で形を決めて終わりました。

まあ、今日は話もシンプルで実に分かりやすかった。これならば中高生でも、解説なしでもよくわかったのではと思うのでした。

終演の後外に出るとまだ十分に明るい。でもちょっと残念なのは、劇場のロビー横の和風カフェが、3月をもって閉店していました。いつも国立劇場へ行った時時間つぶしで入って、気に入っていたのですが。蒸し暑い中を、ちょっぴり寂しい気持ちで帰宅したのでした。

鈴本演芸場6月下席夜の部 蜃気楼龍玉主任 6月22日(金)

先週に引き続いて今日も鈴本演芸場の夜席です。今日の主任は蜃気楼龍玉師匠です。この人も直接言葉を交わしたことはないが、気になる噺家さんです。圓朝根多など、長講大根多に取り組む芸風を確立しているところに注目しています。

いつものとおり開場時刻の少し前に行くと、既にチケット販売が始まっていて入れるような。その前に龍玉さんの幟の写真を撮っておこうと、風の向きが良くなるのを待っていたら、何と鈴本演芸場のスタッフの人が、幟を撮りやすい角度に開いてくれたのでした。ありがとう!

さてチケットをもぎって入ると、もう既に前の方の席はかなりの入りでした。龍玉さんの応援隊かもしれません。足元の広い席に陣取って待つこと暫し、開演です。

そして開口一番が、古今亭まめ菊さん。先週来た時にちょっと気になった女性の前座でした。何だか春風亭ぴっかりさんの前座の頃の印象と重なって、この人名前は、そして師匠は誰?と気になってたのです。早速今日その高座を見ることができました。

小さくて可愛くて元気かいい、そして喋りは絶好調!!今年3月に前座デビューとは思えない度胸の良さです。始めたのが『子ほめ』なのだが、なぜか会場からの笑いが少ない?いや、観客も笑う前にあっけにとられてるようです。でも何だか微笑ましい。

そんな会場の空気などどこ吹く風で快進撃が続きます。もちろん師匠から教わった通りに演ってるのでしょうが。そして赤ん坊を褒める場面になってようやく観客が笑い始めました。ようやく女の子がガラっ八を演ずる違和感が解けて来たようです。

最近女性の落語家が増えて、それぞれ個性を発揮して活躍していますが、前座の初対面の高座で強烈な印象を受けたのは久しぶりです。思い出せば立川こはるさん、春風亭ぴっかりさん(当時は春風亭ぽっぽ)、そして今日の古今亭まめ菊さん。もう顔と名前は忘れません。しっかり脳裏に焼き付きました。ちなみに師匠は古今亭菊之丞師匠だそうです。

続いて古今亭始さん。またまたこの人も出て来て早々絶好調を受け継いでます。そして歌舞伎や落語の褒め言葉、掛け声。そして花火の話から『たがや』が始まりました。でもマクラで花火が隅田川に落ちるまでの「たまや〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」が長過ぎた。そして侍の首が飛ぶサゲまで、一気に駆け抜けてゆきました。

次が鏡見仙三郎社中の太神楽。二席続いた絶好調の熱冷ましと言うべきか。傘回し、五階茶碗、土瓶回し、笠の取り分け、会場の中から感嘆の声が上がってたのでした。でもこの社中はなかなか元気ですね。

続いて桂三木助さん。マクラは知ったかぶりの話から、『転失気』に入りました。次から次と出てくる芸人さんを見ながら一息という感覚です。でも最初っから最後まで絶好調だったら、聞く方も疲れてしまいます。

そして今日出演の演者の一門の大御所、五街道雲助師匠です。トリの蜃気楼龍玉さんも雲助師匠のお弟子さんです。この一門は古典の大根多で鳴らしていますが、まだ前半の上がりなので軽く泥棒の話でした。演目は『夏どろ』でした。

それからアサダ二世さん。出囃子がいつもの演技中のかったるいお囃子。でもかったるい調子ではなく、今はは普通です。そして「今日はちゃんとやります」から始まりました。先週も見たのだが、やはり同じ演目といっても、微妙に毎日変えてるようですね。そして今日は最前列のお客さんをかなりいじり回していました。そのお客さんも一緒にヨタを飛ばして楽しんでいたようです。

続いては五明楼玉の輔師匠です。久しぶりにお目にかかりました。今日は創作根多で、ガンの告知に関する話。調べたら山崎豊子の小説「白い巨塔」の主人公、「財前五郎」そのまま演題にしてしまった話のようです。

そして仲入り前は隅田川馬石師匠です。この人は大山詣り根多のデータ提供などで酒を酌み交わしたこともある人で、あちこちの席で出会います。そして今日は弟弟子のトリのために、その露払いというところでしょうか。でも仲入り前は少し持ち時間も長いようで、『粗忽の釘』をゆったり目に聴かせてくれました。粗忽男に呆れて天を仰ぐ仕草が何とも言えなかった。

そして仲入り。いつしか鈴本演芸場では仲入り後の開演前に前座が出て来て、上演中のマナーのお願い。携帯スマホタブレットは電源を切ってください。写真撮影や録音はお断り、トリの龍玉さんの演技中は出入り止め、などなど。それを今日はあのまめ菊さんが担当していました。

まめ菊さん、何だか楽しそうに喋ってます。また舞台に出て来ての高座返しやめくりの時も、楽しそうなのです。この人本当に根っからの天然採れたて落語大好き娘なんですね。

幕が開いてホンキートンクの登場、先週も見るはずだったのが、体調悪く休演でした。もう治ったのかな。でもそんな心配を吹き飛ばすような、これまた絶好調。安心しました。

次が春風亭百栄師匠です。ももえです。でも山口ではありません、春風亭百栄です。ビートルズを彷彿させるマッシュルームカットも健在でした。そして今日の噺は創作で寿司屋の話、調べたら『寿司屋水滸伝』だそうです。ちょっと客に考えさせるくすぐりが多いですね。

そろそろトリの龍玉さんが気になって来ましたが、それまでにもう一人、紙切りの林家二楽さん、久しぶりに見ました。高座のスタイルは正楽師匠に準じていますが、一題一題少し時間をかけて丁寧に切ってるようにも見受けられます。今日は「桃太郎」「花嫁のブーケトス」「ドンキホーテ」の三題でした。

そして「待ってました」とばかりに、蜃気楼龍玉師匠の登場です。マクラも少なく話し始めたのは『牡丹灯籠』でした。もちろん寄席のトリでも話切れるものではないほどに長い噺。新三郎がお露の幽霊に取り殺されてしまった後の、伴蔵とおみつの『栗橋宿』の場面でした。下席は昨日21日から始まったので、ことによると昨日は「お札はがし」を演ったのかな。

ずっと笑い通しだった客席も、トリ根多になってすっかり空気が変わりました。客席は龍玉さんの話に静かに聴き入っています。笑いの場面はほとんどありません。最後に幸手堤の土手下で、伴蔵が女房おみつを殺害する場面まで演じて、今日の高座は終わりました。

後ろに座ってた女性が、ずっと聞いていたい、と話してた。落語は笑いだけではない、しっとりと聴かせるのもまた芸のうち。特に圓朝ものは西洋の演劇やオペラにも通ずるドラマ性が聴かせどころなのでした。

これを書いている今日も鈴本演芸場下席夜の部では同じ番組を上演している。根多出ししてないので分からないが、今日は何を演るのかな。

鈴本演芸場6月中席夜の部 鈴々舎馬るこ主任 6月11日(月)

このところ鈴本演芸場の夜席はちょっと気になってる若手真打が続々。そして6月上席は昨年真打になった鈴々舎馬るこさんの初主任なのです。馬るこさんとは直接言葉を交わしたことはないが、世田谷区の成城ホールでの公演ででよく見かけます。その他にも世田谷との縁の深い芸人さんですね。そんな馬るこさんを鈴本のトリで見れるということで、これを目当てに中席の初日に足を運びました。

折しも台風接近で、雨で肌寒い。客足はどうなのかな。チケット買ってモギりは一番乗りでした。いつもの右側の2列目に席を陣取ったのでした。

     

客足は決していいものではなかったが、どうやら馬るこさんの応援団が来ているようです。何となくざわついてます。そして開演で前座の開口一番。金原亭駒六さんです。名前からして馬生師匠のお弟子さんであることは言うまでもありません。演目は『たらちね』でした。

次が柳家かゑるさん。二つ目には珍しく、袴を履いて出て来ました。柳家かゑるというと、どうも大御所の鈴々舎馬風師匠の若手の頃の高座名だったことが思い出されます。調べたら孫弟子でした。その間に柳家獅堂師匠がいたのです。でも鈴本の寄席であまり見かけることのない人です。

かゑるさん、声がでかい。その前の駒六さんが落ち着いた声だったので、余計にそのデカさが目立ちます。演目は『子ほめ』でした。

続いてアサダ二世さんの手品。今日はちゃんとやります、の一言で始まりました。そして今日は今まで見たことのなかった芸を見せてくれたのです。それは赤と白の紐を輪にして繋いで、一瞬で白と赤の輪を入れ替える。タネも見せてくれたが要は目の錯覚を使ったものですが、やはりそこは年季の入った芸ですね。寄席の手品ってこんなもんですよ、とさりげない一言でかわしてゆきます。

そして柳家小せん師匠。先日の三K辰文舎の落語とライブで見たところでした。きょうは本業の落語です。演目は『黄金の大黒』。だんだん調子が上がって、小せん節炸裂で終わりました。

次が柳亭燕路師匠、久しぶりに見ます。でもあまり変わりはありません。落語にとって泥棒の噺はおめでたい噺ということで、泥棒の出てくる噺なのだが、あまり聞いたことのない噺。

「出来心」「鈴ヶ森」「締込み」「転宅」「穴泥」「もぐら泥」「だくだく」「釜泥」・・泥棒話は多けれど、今日のは『夏泥』でした。

続いては柳亭こみちさん。ここは色物の時間なのだが、またまた落語家が出て来ました。漫才のトンキーホンクの一人が急病で、その代演だとのことです。昼頃に呼び出されたと言ってました。

そこで落語家であるにもかかわらず、色物の芸を依頼されて、寄席の踊りのレパートリーを2題披露。「奴さん・姐さん」そして「かっぽれ」でした。この人日本舞踊もできるようで、にわか仕込みではないものを感じたのです。

次が古今亭文菊さん。落ち着いた講座の雰囲気で、出てきた話題は「あくび」。それも駄あくびではなくあくび道というべきか。『あくび指南』でした。筋書きは普通の「あくび指南」から少し改編していたようです。

そして仲入り前は三遊亭歌之助師匠。もともと薩摩出の芸人さんなので江戸の古典落語はなし。創作中心なので、聞いたことのある古典根多は出ないだろう。

そして来年春に四代目三遊亭圓歌を襲名します。それがあるためか、今日の演目は師匠の三代目圓歌の追憶でした。この人は涙もろいようです、親愛なる亡き師匠の思い出話ということで、最後は目に涙してたようです。

仲入りがあって、幕が開くとペペ桜井さんのギター漫談。東京の駅のチャイムから始まって、ギターを道具にした芸を聞かせてくれました。

次が春風亭一朝師匠。マクラも短く始まったのが『野ざらし』でした。始めの部分を結構時間をかけて演っている。でもやはりトリの馬るこさんを凌ぐような講座にはならないよう、途中で切って下りてゆきました。

トリ前のヒザは翁家社中の江戸太神楽。今日は小助さんと小花さんのコンビで出てきました。落語協会のHPの芸人プロフィールを見ると、メンバーは小楽、和助、小花の三人でしたが、もう小楽師匠は出てこないのかな。。。持ち時間も推してるようで、「五階茶碗」と「ナイフの取分け」でした。

そして最後のトリが鈴々舎馬るこさん、いや馬るこ師匠です。出てきたら追っかけ隊が満を持してたように「待ってました!」。いやぁ初の鈴本の主任、そして初日から「待ってました!」は嬉しいの一言でしょう。地元の世田谷区でもよく見かける人だから、こちらも半追っかけ隊の気分で聞いてました。

さて夏の噺として入った噺は『青菜』。もっと重いネタかなと期待していたが、でもこの人は軽い話にもくすぐりの尾鰭を沢山をつけて演じる人だから、しっかり持ち時間いっぱい演ることでしょう。

そして植木屋のカミさんが押入れから出てくる場面、その暑苦しさは真に迫ってました。痩せ型の人よりも、太目の人が演じた方が夏の実感が湧く噺ですね。むっとした熱気が伝わった後、弁慶にしておけで終わりました。馬るこさん汗びっしょりでした。

今日は観客数こそあまり多くなかったが、何か会場の乗りのよかった日でした。

花形演芸スペシャル 受賞者の会 国立演芸場 6月1日(金)

国立演芸場では毎月若手の登竜門としての花形演芸会が行われていますが、その出演者の中から毎年際立った芸を見せてくれた芸人さんを表彰しています。その受賞者の会が今日の演芸会でした。そして大賞受賞者は笑福亭たまさんです。

確か5月月初にチケットを取りに行ったが、既に満席で受付は終了していました。しかし昨日何気なく見ていたら、席があるではないか。

早速取りに行って空席状況を確認したら、空いてる席はたった一つ。でも5列目のいい席だったので、迷わず確保しました。今日の公演でも誰かが、今日のこの公演はチケット争奪戦だったと言ってました。

今日の公演は開演時刻が18:00。ということは番組も盛り沢山ということを意味します。なので早めに行かなくてはなりません。

入場して席に着くと次から次へと席は埋まり、本当に100%の満席状態です。満員御礼と言いながらも実際は空き席がパラバラ、ということはよくある光景だが、今日は本当に満席なのです。そして観客も何かを期待している空気です。

そして開演、そして開口一番は前座の柳亭市坊さん。名前からして柳亭市馬師匠のお弟子さんで、まだデビューして1年そこそこ。演目は『たらちね』でした。

続いては雷門小助六さん、ここから先に登場するのは全て受賞者です。小助六さん、歌舞伎の話から入ったのが『武助馬』でした。

次が桂福丸さん。この人は上方です。そして入った話が『元犬』。上方の「元犬」は江戸とどう違う、という興味が湧きました。江戸では舞台が浅草浅草寺だったが、上方では天神さん。というのは天満天神宮ということですね。あとはだいたい同じ展開でした。

そして次が三遊亭萬橘さん。相変わらず眼鏡をかけて登場そのままマクラを語り、やがて眼鏡を取ると本番です。今日の話は『壷算』でした。

それから幕が下りて再び開くと、江戸家小猫さんです。とかく色物は落語の間に挟まって時間調整役になりますが、今日は対等です。しっかり時間をもらって、鶯犬猫鶏・・。

そして当代の小猫さんは、動物の声を求めてアフリカまで渡り、普通の人が聞いたこともない動物の鳴き声を再生するのです。似てるかどうか、、、わかりません。なにせ本物を知らないのだから。そして仲入りです。

仲入り後は贈賞式。橘家圓太郎師匠の司会で始まりました。今日の出演者7名(前座を除く)が順番に呼ばれて、舞台に勢揃いです。銀賞の雷門小助六さん、桂福丸さん、鈴々舎馬るこさん、金賞の三遊亭萬橘さん、江戸家小猫さん、ストレート松浦さん。そして大賞の笑福亭たまさんです。でもまだあと二人いるのです。

それは銀賞の桂佐ん吉さんと金賞の菊池まどか(浪曲)さんでしたが、今日は都合あって出演できず。その後芸術文化振興会の理事長から表彰状と金一封が授与されました。

芸術文化振興会は理事長が交代したばかり。でも前理事長も今日の贈賞式に草葉の陰ならぬ客席から熱い視線を送っていたのです。

これで終わりと思いきや、圓太郎師匠、一人一人にインタビューが始まりました。それが長い。延々7人、でも最後のたまさんには特に長くやらなくてはいけません。大幅に時間超過でした。

一度幕が下りてまた上がって、橘家圓太郎師匠。今日はゲストということでした。そして演目は『祇園祭』。今日の登場演者は江戸と上方が混在していて、その違いを意識させるような噺。でも厳密に言うと、「祇園祭」に出てくるのは、大阪ではなく京都なのでした。

次が鈴々舎馬るこさん。昨年真打になり、今乗りに乗ってます。体重は100キロを超えてるとのこと。そしていつもの図抜けた滑舌で、『真田小僧』を聞かせてくれました。

続いてはストレート松浦さんのジャグリング。トリ前の色物は、トリに忖度して時間調整役がいつもなのだが、今日は違う。時間制限なしということでした。

ジャグリングとは江戸太神楽とは一味違う曲芸の世界。汗びっしょり、フェイスタオルを何枚も使って汗を吹きながら、BGMまで口ずさみながら、たっぷり見せてくれました。最後はさぞお疲れの様子でした。
そして最後が大賞の笑福亭たまさんの高座。幕が開いたら見台膝隠し小拍子の三点セットが設えてありました。そして登場です。

今日の演目は何と『鰍沢』。普通に演って30分以上かかる噺を13分に縮める。一体どんな話になるのか。
出てくる旅人は和歌山から、鰍沢の山小屋に住む女は大阪から来たという設定です。でもこれが上方版「鰍沢」の含みでした。

和歌山弁ではざじずぜぞをだぢづでどと発音するとのこと。そこで旅人がサゲで「お材木で助かった」が「おだいもくでたすかった」という発音になって、語呂がぴったり合うという趣向でした。

そもそも「鰍沢」のサゲは拙劣と言われているものだが、この趣向で少し気の利いた地口オチになったのです。それ以外にも、途中でお囃子ではないBGMを入れたりなど、実に派手な演出の「鰍沢」でした。

てなことで終演時刻は21:15の予定が22:00少し前。それにしても盛り沢山で、疲れるほどに楽しませてもらった今日の演芸会でした。

第15回 3K辰文舎 落語&ライブ 文京シビックホール 5月22日(火)

3K辰文舎とは何ともわけのわからないネーミング。でもちゃんと意味があります。出演は入船亭扇辰師匠、橘家文蔵師匠、柳家小せん師匠の三人組。3Kは三人の本名のイニシャル、辰文舍は高座名から取ってきたということです。

でも結成したのは10年前で、その内二人はその頃から高座名が変わっています。文蔵師匠は以前は文左衛門、小せん師匠は鈴々舎わか馬と名乗っていました。でも「辰文舍」は変えずに残ってる。変えたらサンケイ新聞社との語呂合わせが狂ってしまう。まあ、言葉遊びのややこしい話です。

今日の会場は文京シビックホールだが、そこは東京ドームと隣り合わせです。でもとにかく人通りが多い、今日は巨人の試合があるのかなと思ってたら、後から聞いたらモモクロのコンサートがあるようです。道理で。

さて、少し迷ったが会場の文京シビックホールに到着。それにしても広く立派な施設です。これって文京区民のための施設なんですよね。世田谷区にはこんな施設はないと、羨ましい気分です。そして落語&ライブ会場は奥の小会議室でした。席数は成城ホールより少し少ない程度でしょうか。でも笑点出演の噺家さんは別としても、この会場を満席にするのはなかなか難儀な事でしょう。

やがて開演となり、「から傘」の出囃子が鳴り、幕が開くと開口一番は、贔屓の入船亭扇辰師匠です。黒紋付と正装で出てきました。そして今日の公演の紹介です。「3K辰文舎」の語源についても話してました。でも今日の席の埋まり具合は残念そうです。

そんな話から今日は軽くという事で、演目は『死ぬなら今』。要は閻魔大王が不在の今こそ、死んだら極楽へ行けるという、他愛のない話です。

続いて橘家文蔵師匠、マクラはほとんどなく始まったのが『ちりとてちん』。話が進むに従って、だんだん動作が大げさになり、「ちりとてちん」を嗅いだ瞬間高座にドタンと倒れ込む。その臭気が伝わってきたのでした。

そして仲入り前のトリは柳家小せん師匠です。扇辰師匠が、今日は小せんさんがトリで、自分は引き立て役ということを言ってたので、何か面白い趣向を見せてくれるのではという予感。そこで「歌は世につれ人につれ」とばかりに、昭和初期からの世相と流行歌を実演付きで演り始めました。

最近は社会を映すような流行歌の生まれにくい時代と言われているが、こうやって聞くと昭和の時代は本当に歌と世相が結びついていたのです。それにしても何曲歌ったのか、だんだん顔が赤くなってきて熱が入ってきました。そして戦前、戦争中、そして戦後の流行歌を一通り唄って降りてゆきました。

ところで演目名は、とあとから演目表を見たら『ガーコン』。そうか川柳川柳師匠の根多でした。でも川柳師匠以外にも何人か持ち根多にしてるようです。初めて聴いて知らなかったのだが、結構有名な噺なのでした。

15分の仲入りがあって後半は舞台にピアノや音響機器が据え付けられ、ライブの始まりです。左は文蔵師匠、右は小せん師匠。そしてセンターが扇辰師匠という配置です。

演目は、1970年代、80年代の懐メロが中心だが、どうも歌のタイトルが思い出せない。後で歌ったタイトルは全て演目表に書かれていました。

三人が順番に歌うという事でまずは扇辰師匠から。次は文蔵師匠、そして小せん師匠。落語の中であんなに歌ったのにまだまだ歌うようです。少し声が枯れかかってるのでは。

持ち込んでる楽器も三人三様、というかギターは3人とも持ってきていて、小せん師匠はギター専科。扇辰師匠はそれに加えてピアノも弾く。そして文蔵師匠は打楽器を持ち込んでました。それにしてもいろいろな音を出す。ちょっとふてくされたような顔をして叩いていたのが面白かった。

でも今日は文蔵師匠はツイてなかったようです。ギターを倒してしまったことが原因かわからないが、本番中の舞台の上で音程合わせ。でも演ってるのが落語家だから、ということで会場みんな笑って済ませてました。

そんなハプニング満載の舞台に強力な応援団が来ていた。「3K辰文舎」の横断幕を掲げて応援している人もいたのです。やはり常連もいるこの落語&ライブの舞台。実は小生も何度も足を運んでるのでした。

てな事で楽しいひと時も終わりに近づき、予定されてたアンコールで一人一人あと3曲。でも時間がかなり回ってた。その原因は文蔵師匠のハプニングだったのでした。

終わってからJR水道橋へ向かう道中。人また人の波。人口減少の日本でなんでこんなに人が溢れてるのか、と言いたくなるくらいの人の波に揉まれながら水道橋駅にたどり着いたのでした。よくよく考えたら、モモクロのコンサートも終わったところなのでした。

團菊祭五月大歌舞伎 昼の部 歌舞伎座 5月11日(金)

今日は久しぶりの歌舞伎座です。お目当は市川海老蔵(成田屋)さん。今月の公演は昼夜の二部構成ですが、昼の部は海老蔵さん一人五役という、まさに超人的な役回りです。そして夜の部は尾上菊五郎さんと音羽屋の出番です。

團菊祭というのは毎年五月にやっているが、起源を辿ると明治時代の九代市川團十郎と五代尾上菊五郎の功績を称える吉例公演だそうです。そう言えば12代市川團十郎沒周年ということです。なので成田屋の看板を支えるの海老蔵さんが、昼の部はは主役以上の存在です。

         

やはり海老蔵人気はただならないものがある、開演30分前に着いたら歌舞伎座の周りは人がいっぱい。入場したら大部分の席は埋まっていました。そして座った席は二階席の最前列。役者との距離は少し遠いが、花道はしっかり見える席です。何といっても前の席に福禄寿のような人に座られることを心配する必要もない。

今日の演目は、通し狂言『雷神不動北山櫻』。この狂言の中の、二幕目が「毛抜き」、そして三幕目が「鳴神」として、歌舞伎十八番として単独で上演されているものでした。そうか、これが海老蔵さんが一人五役を演る背景なんだな。

そして今日の構成は

『雷神不動北山櫻』時は平安時代です
口上  市川海老蔵
発端  深草山山中の場
序幕  大内の場
二幕目 小野春道館の場(歌舞伎十八番「毛抜き」)
三幕目 第一場 木の島明神境内の場
三幕目 第二場 北山岩屋の場(歌舞伎十八番「鳴神」)
大詰  第一場 大内塀外の場
大詰  第二場 朱雀門王子最期の場
大詰  第三場 不動明王降臨の場

その五役というのは、早雲王子・安倍清行・粂寺弾正・鳴神上人・不動明王。それぞれが性格の異なる人物役。海老蔵さん休む暇もない変わり身です。そして舞台の上での早替わりもあるということです。

開演してまずは口上。幕が開くと舞台の中央に赤毛氈と座布団、そこに海老蔵さんが深々と頭を下げて座っていました。そして開口一番の口上、その中で今日の演目の『雷神不動北山櫻』の紹介説明、その中での五役の事も話していました。背景にはその五役の肖像が。

口上が終わってセリが下りて、まずはこの狂言の発端です。いきなり立ち回りでした。海老蔵さんまず、天皇になりたい野心を持つ早雲王子で登場、この狂言最大の悪役です。それが鳴神上人をそそのかして、龍神を封じ込めて日本中に雨が降らないようにする。旱魃が起きる。これがこの狂言の一つのテーマでした。

次の序幕では軟弱な安倍清行、100歳を超えた色事師役でした。旱魃に悩む百姓に請われて現れた早雲王子に早変わり。てもその早雲王子は百姓の心を掴むいい子になってしまいました。

ここに出てくる「ことわりや」の短冊には、小野小町の歌が詠み込まれてる、それは雨乞いの歌。「千早ふる神もみまさば立ちさばき天のとがはの樋口あけたまへ」と説明されていました。でも調べてみると「ことはりや日のもとなればてりもせめさりとてはまた天が下とは」という歌の方が多く伝わってるようです。

第二幕は、成田屋の歌舞伎十八番として有名な「毛抜き」の場面です。ここでは海老蔵さん、文屋豊秀から小野春道館への使者、粂寺弾正として登場しました。ここでは磁石によるマジックでが出てきます。錦の前の姫の髪飾りの磁石で、姫の髪が逆立つ。そして暇つぶしをしていた弾正の毛抜きが宙に浮く。このからくりを弾正が見抜くというくだりでした。

第三幕目は、これまた歌舞伎十八番の演目「鳴神」で、この幕の見せ所は、清廉潔白な修行僧だった鳴神上人が、雲の絶間の姫(尾上菊之助/音羽屋)の色香に取り込まれて、生臭坊主に転落し、さらに騙されたことを知った怒りで、鬼神に変貌するところでした。ここでも海老蔵さんは後見の手助けを受けながら、早変わりそして早変わり。

この雲の絶間の姫とは、関白基経が鳴神上人を陥れて、雨を降らせるために派遣したハニトラだったのでした。鳴神上人の寝ている間に、滝の岩と岩を結ぶ注連縄を切って龍神を解放。雨が降り始めました。

それにしてもハニトラというのは古今東西、敵を陥れる手段としては有効なんですね。今世間を賑わすスキャンダル。助平な高級官僚が、メディアのセクハラを装うハニトラ取材で陥れられた事件と重なってしまいました。

大詰めは早雲王子の最後の場。悪事の露見した王子を捕らえようとする捕り方との、実に派手な立ち回りでした。でも王子は強い。捕り方は次々にトンボを切って倒れる。でもまた生き返る。

花道の上で木遣りの梯子乗りのような芸。舞台装置の2メートル位の高さから、もんどり打って飛び降りたり。失敗して怪我しやしないかとハラハラしながら見てました。

そうかと思えば、王子と捕り方が交錯して、梯子と縄で成田屋の三枡紋を作ってみたりなど、魅せどころ満点。そして衣装も平安時代には考えられないもの。こんな時代考証クソッ喰らえの演出も歌舞伎の面白さです。そして最後に早雲王子は捕り方に捕らえられるのではなく、不動明王の天の声で成敗されたのでした。

大詰め、最後は不動明王の降臨。真っ赤な照明に染まった舞台に現れて、剣を持って森羅万象正しい道に導く教示をしたのでした。勿論この役も海老蔵さんで、本当に最初っから終いまで、出ずっぱりの忙しい舞台でした。

ここで今日の公演は全て終わったと勘違いしたら、実はもう一つ残ってました。それは舞踊の『女伊達』、木崎のお光さん。それが滅法強いのです。

演じるのは中村時蔵(萬屋)さんで、喧嘩相手の男伊達が中之島鳴平(中村種之助/播磨屋)と淀川の千蔵(中村橋之助/成駒屋)。

二人の男伊達を追い払いながら、理想の男伊達、花川戸助六を想うという歌と舞踊でした。

これでようやく終演です。でも今日の公演は実に話題豊富。さらに夜の部には音羽屋の舞台が待っているが、今日はここまで。

折しも成田屋の屋号の由緒である、成田山新勝寺の御本尊の不動明王の像がご開帳されてました。勧進を募ってたので、幕間にお参りしたのでした。

あとこの團菊祭のテーマとして、平安時代の六歌仙にまつわる話を出してゆくというものがあり、まず小野小町だったのです。六歌仙の中には文屋康秀が入ってるのだが、今日出てきたのは文屋豊秀でした。そして夜の部には喜撰法師が出てきます。

ということで楽しんただけでなく、知識的な欲望も満たしてもらって歌舞伎座を後にしました。