完全通し狂言「仮名手本忠臣蔵」第3部 国立劇場 12月16日(金)

今日は12月16日、師走も早や後半戦に入りました。赤穂浪士の討ち入りの日は14日で一昨日です。とはいうもののこれは旧暦の話で、新暦に合わせると1月末ということです。でも一月末では何となく物語になりにくい。そこで新暦の今でも12月14日が討ち入りの日になっています。

それに合わせてこの国立劇場開場50周年記念のこの三部公演も、討ち入りの場面のある最終の部を12月に合わせたのでしょう。ともあれこのような完全通し公演は、全て観尽くさなくては意味がありません。開演時刻は11時、終演が16時だから今日も長丁場です。

12月としては今日も寒い。澄んだ青空の下、天気がいいから尚更寒い。こんな中ちょうど開場の時刻に到着しました。寒い中待たされることはなさそうです。そして今日の席は前から2列目ということで、ほとんどかぶりつきの席です。役者の顔がよく見えます。イヤホンガイドを聴きながら待つこと暫し。やがて緞帳が上がって定式幕となり、開演です。

今日は八段目の「道行旅路の嫁入」から九段目「山科閑居の場」、十段目「天川義平内の場」、そして十一段目「高家表門討入りの場」「同広間の場」「同奥庭泉水の場」「同柴部屋本懐焼香の場」そして「花水橋引揚の場」まで、長〜〜い一日となります。

八段目「道行旅路の嫁入」は舞踊の段で、大星由良之助の倅の大星力弥の許嫁の小浪(中村児太郎/成駒屋)と母親の戸無瀬(中村魁春/加賀屋)の、京都山科への旅です。でもそれは受け入れてもらえるかもわからない押しかけ嫁入りのような旅です。

場面が富士山の見える東海道から、大津、そして三井寺と場面が変わります。次々に舞台の背景のえが美しく変化してゆき、あと少しで力弥のいる山科へと花道に消えてゆきました。

そこで35分の幕間。観客はそれぞれに昼食です。国立劇場は歌舞伎座同様弁当の予約ができるので、幕が閉じて休憩に入ると予約席に弁当が用意してあるという具合です。一方幕間の間は客席でも食事をしても良いのでした。

昼食時間が過ぎて次は九段目「山科閑居の場」です。これこそ一つの場で展開される長〜い幕です。まずは大星由良之助(中村梅玉/高砂屋)が酔いつぶれて、花街から雪玉を転がしながら帰ってくるところから始まりました。大石内蔵助が仇討ちの意思はないと敵の目を欺くために、遊び呆けたというのは有名な話です。それを迎えた妻のお石(市川笑也/澤瀉屋)の険しい表情が目につきました。

その後小浪と戸無瀬が山科に到着して、嫁入りの申し出をしたところお石に断られる。お石の中では複雑な感情が渦を巻いている場面でした。やはり前列の席は役者の表情がよく見える、小浪の可憐な思い詰めた表情も見入るものがありました。

親子で自害しようと思い詰めたその横で虚無僧の吹く「鶴の巣篭」から、お石が祝言を許す展開。そして引き出物に加古川本蔵の首を差し出せという要求。その加古川本蔵というのは三段目の刃傷の場で塩谷判官を抱きかかえたために、高師直を打つことができなかった。その怨念を抱えてたのでした。

そして虚無僧の姿から加古川本蔵(松本幸四郎/高麗屋)の登場、そこに大星力弥(中村錦之助/萬屋)も現れて立ち回り、複雑な展開です。ここでは力弥に刺された本蔵の絞り出すような声が存在感豊かに響いてました。

近くで見る力弥はいささか老けてるのが気になったが、解説を見ると難しい役どころが多いので、ベテランの役者が演じることが多いとありました。

複雑な展開の九段目、最後は本蔵が引き出物として師直邸の絵図面を渡して、いよいよ由良之助の出陣が促されたのでした。そして本蔵は幕とともに命が尽きたのでした。

この九段目は落語根多にもなっていますが、今はあまり演じられることもない。サゲがわかりにくいこともあるが、YouTubeに残ってた圓生の語りを聴くと、芝居を見たことのない人にはあまり楽しめそうもないものでした。やはり落語は特定の人だけにしかウケない根多は廃れてしまうようです。

長〜い九段目が終わって20分の幕間。そして次が十段目の「天川義平内の場」。仮名手本忠臣蔵の中で、唯一商人の登場する場です。でもその商人、天川義平(中村歌六/播磨屋)は男気のある商人。由良之助が武器の調達を頼んだものの、本当に最後まで裏切らない信用のできる人物かを試す場面。ここが見せ所でした。捕手に囲まれて武器を入れた長持ちの上で胡座をかき、そして一人息子の由松に刃を向けるまでして忠義を示したのです。そこで大星由良之助が「しばし!」と声をかけて、実はその捕手が仇討ちを目指す同士。

その後暇を出した女房のお園(市川高麗蔵/高麗屋)、裏切り者の斧九大夫の娘ということで髪を切って尼にしてしまうなど、忠義と情の表し方は現代の感覚とかけ離れたものがあります。でもともあれ武器は江戸、じゃあない鎌倉に送られていよいよ次の段は完結編の十一段目になります。

15分の幕間の後十一段目が始まりました。定式幕が引かれると舞台にはさらに浅葱幕。チョーンという拍子木の音で浅葱幕が降りると、そこには大星由良之助を中心に浪士たちが討ち入りの前の勢ぞろい。高師直邸の表門前です。

それが二手に別れてから場内は真っ暗になり、次の場の舞台準備を急いでるようです。これまでの段は一幕一場で進んできたのが、この段では次から次へとめまぐるしく場面が変わります。そして立ち回りの連続です。

次の場は高家広間の場で、主君への忠義を尽くすお茶係の子供茶道春斎(中村玉太郎/加賀屋)など、殺伐とした立ち回りに人間的なアクセントを加える。結局は討たれてしまうのだが。

次の「同奥庭泉水の場」では高家の剣豪小林平八郎(尾上松緑/音羽屋)が出てきて白熱した立ち回り。そして「同柴部屋本懐焼香の場」で炭小屋に隠れていた高師直を引き出して討ち取ったのでした。その間単なる立ち回りではない様々な趣向を凝らしながら見せてくれました。

そして「花水橋引揚の場」で師直の首を掲げて塩冶家菩提寺へ向かう途中、桃井若狭之助(市川左團次/高島屋)が現れて、浪士達が本懐を遂げたことを喜んで幕となりました。

でもちょっと違う?以前5年前に通しで見た時には若狭之助ではなく、石堂右馬允が馬に乗って現れた記憶がありました。調べたら確かに以前見たのと違う。台本もいくつかあるのかもしれません。あるいはその時その時に台本そのものを修正する自由度があるのかな。。。

それはともあれ、10月から3回にわたって通しで「仮名手本忠臣蔵」の全てを観ることができました。きっと次にこのような趣向を観る機会は一生ないことでしょう。大変満足感の高いものがありました。

帰りに売店で購入したのが、ご存知「切腹最中」。謝罪にゆく時の手土産にうってつけというものだが、そんな時にもらった人は本当に喜ぶかなと首をかしげます。でもこの最中は以前から知っていた。根強い人気があるようです。

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