鈴本演芸場4月上席夜の部 隅田川馬石主任 4月4日(木)

ようやく年号も令和と決まり、桜も満開になりました。どうも人々は外でぱぁっと花を咲かせたい気分ですが、さてこんな時期の寄席の方はいかに。

今日はまたまた鈴本演芸場の夜席にお邪魔しました。今日のトリは隅田川馬石師匠です。でももともとこの上席の主任は蜃気楼龍玉師匠です。今日は休演でした。でも馬石師匠も贔屓の噺家さんなので、あたしにとっては問題なし。何だかいい高座を聴かせてもらえそうな予感です。

龍玉さんのHPコピーを見せて割引木戸銭で入場して、いつもの席に着いたが、やはり会場は寂しい。こういう時の観客は一箇所にまとまるのではなく、前後右左と適度な距離を空けて埋まってゆくものです。みんな友達がいないんだなぁ。

さて開演、開口一番は前座で林家彦星さん。調べると福島県出身で林家正雀師匠のお弟子さんとのことです。淡々とした語り口は、正雀師匠譲りなのかな。そうではなくとも前座にとって師匠は絶対的な存在で、似てくるのは仕方のないことでしょう。演目は『道具屋』で、出てくる与太郎も天衣無縫な馬鹿ではなく、頭のネジが1本2本足りないような馬鹿でした。

続いては桃月庵こはくさん。名前を見れば師匠は誰かは明白ですね。桃月庵白酒師匠。もう白酒師匠には3人もお弟子さんがいるんですね。みんな名前は雛祭りにちなんだよう名前になってます。そしてこはくさんは一番弟子のようですが今は二つ目。ちょっと変わったユニークな語り口です。演目は『代脈』で実に楽しそうに演じていました。

次がダーク広和さんの手品。今日も初めての根多を見せてくれました。片手でのカードの広げ方のうんちく。最近黙って演じるのではなく、いろいろ解説が入ります。

寄席の手品は喋りも大切なんですね。そしてこれまで手品の根多を300種も作ってきたということです。手品師としてこの数字、多いのか少ないのかはよくわからないが、でも毎回も違う根多を見せてくれるということは、多いのでしょうね。

そしてまた落語に戻って、金原亭馬治さん。ご隠居、美味い酒を飲ませろ!『子ほめ』が始まりました。最近「子ほめ」というと前座ばかりですが、たまに真打以上の「子ほめ」を聴くと、なぜか新鮮な気分です。で、馬治さんのはというと、ずいぶん粘っこい「子ほめ」ですね。でもやはり前座と比べてしまうと、格の違いがあります。やはり真打は真打というものでした。

続いても落語で橘家文蔵師匠です。登場して会場をぐるっと見回して、後ろに座ってる人を前に詰めたら、2列で済んでしまう。芸人さんにとって、客の入りは生活の糧。その辛さよくわかります。

でも客は意地悪なもの。こういう日を狙って鈴本に足を運ぶのです。こういう時に限って、年に一度聴けるかどうかの名演技に出会えるかもしれないというのが、これまでの経験値です。でも今日の文蔵師匠は早い上がりで持ち時間も限られてるんでしょう。軽い噺しかできないはず。演目は『目薬』、結構卑猥な話でした。

次がぺぺ桜井さんのギター漫談。何とも賑やかな紋様のジャケットを着てギターを抱えて出てきました。JRの駅の発車オルゴール。駅によってみんな違います。それを一通り聞かせてくれました。

再び落語に戻って柳家喬太郎師匠です。今や人気者でなかなかチケットも取れなくなってきたキョンキョンだが、こんな鈴本の寄席にも出演してるのです。ところで近くで見るとずいぶんダイエットしたようですね。一頃この人太り過ぎでヤバいよ、と心配したこともあったがもう安心して見ていて大丈夫ですよね。

そして演目は『宮戸川』でした。何でも呑み込んでしまうウワバミのような叔父さんの手にかかって、半ちゃんお花のカップル一丁上がり。でもこの先台本が破れての言い回しはありませんでした。

そして仲入り前は五街道雲助師匠。やはり上席の主任の蜃気楼龍玉師匠も、今日のトリの隅田川馬石師匠も、この雲助一門で、師匠はその引き立て役に徹しています。そして今日の演目は『辰巳の辻占』でした。

この噺、2月に国立演芸場の鹿芝居の根多だったのだが、普段あまり聞くことがありません。なぜなのかな?面白い面白くないというよりも、聞き手にとって話の筋道をイメージしにくいところがあるようです。なのでボーッ聞いてるのではなく、少し構えて聴いたのでした。

仲入りがあって後半になる前に、前座が出てきてお客への注意事項の朗読。いつもの携帯の電源を切ってください云々です。そして幕が開いて漫才のホームランの登場。この二人は筋書きのあるネタというよりもかなりアドリブで話すようです。

そして今日の客席には三列目中央に若いノリのいい男女のグループが来ていたので、いじり始めました。そして時計を見て時間ということで下りていったのです。

次は落語に戻って、今日は柳家甚語楼師匠です。始めたのが『猫と金魚』「猫金」です。この噺は今は亡き橘家圓蔵師匠のお気に入りでお手の物だったのが想い出されます。とにかくこの噺の聴かせどころは、ピントの狂った番頭さんのやりとり。圓蔵師匠のは何とも言えないをかしさがあったが、今日の甚吾楼師匠も負けてはいません。ナンセンスさを競っていました。

そしてトリ前のヒザは林家正楽師匠の紙切り芸。まずはいつものとおり「相合傘」でのご機嫌伺いで始まりました。そして客席からのお題は、「桜並木」と「端午の節句」でした。

最近聞いた話で、紙切り芸人さんにとって一番悩ましいお題は、「101匹わんちゃん」と「AKB48」だそうな。確かにこれを切っていると、年を取ってしまいそうです。今日は「欅坂46」をリクエストしようかと思ってたが、言い出す勇気はありませんでした。

そして今日のトリは隅田川馬石師匠です。本来の主任の蜃気楼龍玉師匠は弟弟子で、今日は休演。どこか別のところでお座敷がかかってるのでしょうね。会場を見渡すと客の入りはちょうどいいとのことです。そのココロが何とも切ないものでした。

要は客の入りが本来の主任の龍玉師匠より多いと、龍玉師匠にとって何のための主任なのかということになる。逆に大幅に少ないと、代演とはいえこんなのをトリに起用した意味がないということになる。少し少ないのが丁度良いそうです。でもあたしは密かに期待していた。今日の馬石師匠は記憶に残る名演技を聴かせてくれるのでは、と。

始まったのが恋煩いの話。最初は「崇徳院」かなと思ってたがそうではない。搗き米屋の若旦那が、吉原の傾城の花魁に恋をした、ということで『幾世餅』でした。この噺は古今亭の噺の代表格。まさに得意芸のつぼにはまったような熱い演技です。比較的クールだと思ってた馬石師匠が、ここまで熱のこもった演技を聴かせてくれたというのも嬉しい誤算でした。

やはり平日の鈴本演芸場の夜席には福がある。パラパラと空席の多い会場で聴く記憶に残る名演技。何度も何度も寄席に足を運ばなくては出会うことのできない幸運。今日はそんな気分でした。

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