第90回歌舞伎鑑賞教室「卅三間堂棟由来」国立劇場 7月10日(日)

0710kokuritsu01今月も国立劇場では歌舞伎鑑賞教室が行われています。今月の演目は『卅三間堂棟由来』、何て読むのか。それは「さんじゅうさんげんどうむなぎのゆらい」だそうです。この卅三間堂は後白河法皇の名で建立された実在の建築物で、この建立にまつわる伝説をもとに宝暦10年に「祇園女御九重錦」という人形浄瑠璃の作品が作られ、それが原作ということです。

0710kokuritsu02 0710kokuritsu04 0710kokuritsu05 0710kokuritsu06 0710kokuritsu07そしてもう一つのテーマが「異類婚姻譚」、すなわち人間と動植物の精との結婚。この作品の主役のお柳という女は、柳の木の精なのです。この物語も実に切ない異類婚の家族愛でした。

歌舞伎鑑賞教室ということで、今日も作品上演の前に歌舞伎の初心者向けの解説があります。今日の担当は坂東新悟さん(大和屋)です。

先月は高校生達の喧騒の中での鑑賞でしたが、今日はどのような層なのかな。国立劇場周りにも、先生に引率された団体らしい人たちは見られない。一般か大学生なのかな。静かなものです。やがて緞帳が定式幕に変わり、いよいよ開演です。場内が真っ暗になって、花道のスッポンから坂東新悟さんが登場しました。そしていつもの歌舞伎の基本の解説が始まりました。

まずは舞台装置、スッポン、花道、揚幕、定式幕・・そのうち上手の方から柝が入り、竹本が台車に乗って出てきました。そこで暫しの実演。次が女形の実演は中村春花さん(加賀屋)。

すると差金の先に付けられた鷺が舞い、それを別の差金の先の鷹が追いかける。そしてその鷹の主の家来が出てきて、新悟さんと立ち回り。そして見栄の実演。。。。今日の演目に関係ある場面などの仕込みを兼ねた解説でした。

20分の幕間の後、「卅三間堂棟由来」、まずは序幕「紀州熊野山中鷹狩の場」。ここに柳の大木があり、この精がお柳(中村魁春/加賀屋)で、この木の下で茶屋をやってました。鷹狩りの鷹が枝に絡まって動けなくなったのを助けるために、危うく柳の木が倒される危機を、横曽根平太郎(坂東彌十郎/大和屋)が救って、そこでお柳と縁組をしてしまうという何とも気の早い話です。

そこで10分の幕間があって、「横曽根平太郎住家の場」。すでに5年経過してそこには緑丸という5歳の子供がいました。変だと思ったがよく考えたら、昔は数え年なので、今の4歳に相当します。

それはともあれ平和な家族の日常に異変の起こる場です。それは白河法皇の頭痛を治めるために、法皇の前世の蓮華王坊という修行僧の髑髏の残っている柳の木を棟木として、卅三間堂を造るためにお柳の柳の木が伐採されるというのです。

「異類婚姻譚」は相思相愛の仲睦まじい夫婦でも、悲しい別れが待ってます。やがて斧の音が響くとお柳が悶え苦しむ場面が来るのですが、その間に緑丸も交えた親子の情、家族愛の場面がたっぷりと演じられました。そこで見せてくれたのが緑丸役の子供の芸。花道でしっかり見栄を切るのに会場からはやんやの喝采です。

そして悲しい別れの場面、舞台の上で衣装の早変わり。これは引き抜きと言うそうで、後見が衣装に仕掛けられた糸を抜くと、その瞬間に衣装が変わります。お柳は髪も流れ髪になって柳の精の姿に。そして自らの身の上をクドき、舞台を舞いながら消えてゆくのでした。何とも切ない別れの場面です。

でももう一度現れました。その手には蓮華王坊の髑髏が、それを平太郎に渡して、今度は本当に消えて行きました。平太郎、滝乃、そして緑丸の呼び止めの声を残して。

そのまま舞台が回り、「木遣音頭の場」になりました。そこに倒された柳の木の幹が運ばれてくる。そので演じられる木遣音頭もこの劇の見せ場です。そのうちに押しても引いても木が動かなくなる。その場に駆けつけた平太郎が、これは妻のお柳が我が子との別れを惜しんでるということで、緑丸に綱を曳かせると再び動き出し、やがてお柳の姿が宙乗りで現れて別れを惜しんだのでした。涙の場面でした。

この劇は上演時間は、1幕25分、2幕60分というものでしたが、その時間の割に多くの要素が組み込まれた、中身の濃い一時でした。

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