歌舞伎鑑賞教室「神霊矢口渡」国立劇場 6月16日(日)

毎年6月7月の国立劇場では歌舞伎鑑賞教室というものが行われます。これはまだ歌舞伎に馴染んでいない初心者向けに、若手の役者たちがいろいろ解説してくれるという特典付きです。上演されるのは有名な演目の一場面だけですが、これで歌舞伎への興味を持って、劇場へ足を運んで欲しいというものでしょう。チケット料金も安いです。

ということで今年6月の演目は『神霊矢口渡』の中の「頓兵衛住家の場」です。この作品は明和7年(1770年)に人形浄瑠璃として上演され、その後歌舞伎化されたものということですが、の作者は福地鬼外、それはペンネームで何と平賀源内だそうです。

平賀源内という名前は江戸時代の発明家として知られているが、劇作まで手がけてたというのは驚きですね。レオナルド・ダヴィンチにも相当する多能多芸な天才とも言えた人なんですね。

時代は鎌倉時代と室町時代の狭間でもある南北朝時代。新田義貞の息子、新田義峰が主人公として出てきます。その義峰というのは実にいい男、イケメン。それに一目惚れしたのが兄義興の仇、渡し守頓兵衛の娘お舟という展開です。

さて今日は嵐の後の好天気。昨日夜中の雷なんて嘘のように晴れ渡り、爽やかな暑さです。いつもの歌舞伎鑑賞教室では、中学生や高校生などが団体で来ていると、入場前の路上から話し声で賑やかなことこの上ありません。そして入場したら劇場中に数百人のお喋りが響き渡ります。

でも今日はちょっと様子が違う、バスで現れた団体は若者ではなく、どこかの敬老会のような人たちかな。なので団体とは言え比較的静かなものでした。

やがて開演で、いつもは拍子木に太鼓にお囃子で始まるはずなのに、いきなりラップが聞こえてきました。そう言えば普通の緞帳が上がりで、定式幕ではありません。

舞台に登場したのが中村虎之助(成駒屋)さん。今月の歌舞伎入門の解説担当です。そしてこの後幕間を挟んで、新田義峰役で登場します。舞台の中央に立っつと舞台が廻り始め、セリも上がってぐるっと1周して、解説が始まりました。

まずは歌舞伎の舞台の紹介。廻り舞台にセリ、そして下手にある黒御簾その中で今日の場面、矢口渡の河辺の音を模した太鼓の演奏。などを披露。続いて上手を指差すと義太夫と竹本が二人出てきました。

続いて会場から有志二人が呼び出されて舞台へ上がりました。二人とも女性です。何をやらされるのかな??舞台上手のツケのパチパチという音に乗って動き回るという体験。そして見得を切る動作。そしてホンモノの女性に女形の所作。そして最後は電動式の船に乗って花道を走って下りてゆきました。

この後江戸時代からタイムスリップして平賀源内(中村いてう/中村屋)さんが登場、けったいな箱を持ってます。これがあのエレキテルだったのです。そして次が今日の物語のあらすじ、『神霊矢口渡』の説明に入りました。そこでちょっと注目してくださいと言われたのが、娘お舟(中村壱太郎/成駒屋)が最後に太鼓を打つ場面の動作。これが「人形振り」という演出ということです。

もともと人形浄瑠璃から始まった作品なので、この最後のクライマックスの場面での感情の高まりを、元祖の人形の動作で表現するという趣向です。初めて見るものでした。

最後に舞台の写真を撮ってSNSで発信してくださいということで、この時だけは禁断の写真撮影が許可。会場から一斉にパチパチパチとシャッターの音。さてどれだけSNSに発信されてるのでしょうか。

20分の幕間があっていよいよ始まりました、「頓兵衛住家の場」。この場面に来るまでに、主人公の新田義峰(中村虎之助/成駒屋』の兄。新田義興が、竹澤監物と渡し守頓兵衛(中村鴈治郎/成駒屋)のだまし討ちにあって討ち死にするという前置きがありました。

新田義峰が連れの傾城うてな(上村吉太朗/美吉屋)とともに、その仇の頓兵衛の住家に現れて、娘お舟と顔を見合わせたその瞬間、お舟が一目惚れでよろめく。これが会場の笑いを誘っていました。それで宿ではないはずなのに義峰の一行を泊めてしまうのでした。それにしても壱太郎さんの娘役って、いつも本当に可愛いのです。

それうち泊まってる客人が義峰であることが、主人の頓兵衛にわかってしまう。そこで恋と親子の板挟みになったお舟は、結局義峰一行を逃そうとする。その時に親の頓兵衛から間違って刀で刺され、さらに打擲されながらも最後の力を振り絞って、村の囲みを解く太鼓を鳴らす場面になります。

ここで黒子が出てきて膜で覆ってお舟の着替え、いよいよクライマックスの人形振りが始まりました。お舟の両側に人形師に模した黒子が付き添い、人形の仕草で髪を振り乱すパフォーマンス、これがこの劇の見せ場です。

そして櫓に登って遠のく意識の中太鼓を叩く。するとどこからか矢が飛んできて頓兵衛の喉を突き通す。これはかつて討たれた義興の怨霊のなしたことと解説されていました。ここで幕となりました。

今日はイヤホンガイドは借りずに観ましたが、比較的わかりやすかった。中学生高校生くらいでも、十分楽しめるのではないでしょうか。

一つ誤解してたことがあります。てっきりこの劇の中に平賀源内のエレキテルが出てくるのかなと思ってたのだが、それはありませんでした。やはり芸能は芸能、科学は科学なんでするね。

開演は11時で終わったのは13時過ぎ。時間も短いから気楽に楽しめる歌舞伎観劇でした。

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