暮れの浅草羽子板市と鈴本で「芝浜」を聴く 12月19日(日)

1219shibahama011219shibahama02クラシックファンはベートーベンの第九を聴いて年を越す。落語ファンは「芝浜」を聴いて年を越す。今年は「スターウォーズ」というおまけ付き。

今日は年末の風物詩をふたつ。一つは浅草寺境内での羽子板市と、もう一つは鈴本演芸場での「芝浜」を聴く会です。

浅草はいつも賑わってるが、取り分けて今日は羽子板市の最終日。いつもにも増して人また人。仲通りは掻き分け掻き分け進む有様です。そしてご多分に洩れず外国人も多い。

そして境内に入るとありました、やっていました。恒例の羽子板市。でも何店舗位出てるのでしょうか。以前より規模が小さくなった印象です。そこで小さなのを一つ衝動買いしました。

伝統的な羽子板には歌舞伎根多が飾られていることが多いが、今日購入したのは「雛鶴三番叟」。調べてみたら三番叟の中でも、最も古い作品とありました。

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衝動買いで財布がかるくなったので、あとは冷やかしながら見物。でもあまりの混雑で息が苦しくなったから、浅草を後にしたのでした。

暫く時間調整をして上野広小路へ行くと、丁度開場したばかりで、チケット待ちの列が動き始めていたところでした。いつもの通り17時の開場です。

今年の12月中席夜の部は特別企画です。毎日日替わりで、違う演者が同じ『芝浜』という根多を聴かせます。もし毎日足を運べば、十人十色の「芝浜」の聴き比べができるのです。

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鈴本演芸場の夜席は客の入りが少ないというのが、芸人さんたちの間で囁かれる噂なのだが、今日のような特別企画の場合は話が別のようです。席に着いた時には既に前列の半分位が埋まっており、開演間近にはさらに増えていました。そして開演です。

開口一番は三遊亭あおもりさん。調べると三遊亭白鳥師匠のお弟子さんとのことです。一度聴いたことがある。半年前でした。まだほやほやの前座さんですね。

今日の演目は『牛ほめ』、でも何だかちょっと違う。間違えたり腕はまだまだだなと思って聞いていると、この人天然で笑いを取っている。今まで見たことのない芸風を垣間見させてくれるのです。やはり師匠が師匠だからか、『牛ほめ』の中身もずいぶんいじってました。

続いては台所鬼〆さん。来年三月に晴れて真打昇進で、名前も台所おさんとなります。相変わらずけったいな名前を背負って行くのだが、この名前を最大限に活用しているようです。滑舌が悪いように見えて、実はしっかり喋る。独特の語り口。一度聴いたら顔と名前はしっかり一致します。

そして演目は『狸の鯉』でした。この噺は途中まで「狸札」と同じですが、化けるのが5円札ではなく俎板の鯉なのでした。

次が翁家社中の江戸太神楽、今日の出演は翁家小楽さんと和助さんでした。やはり大将の和楽さんが亡くなってちょっと寂しいものがありますね。でも芸はしっかり継承されているようです。傘回し、五階茶碗、ナイフの交換取りを見せてくれました。

続いて古今亭志ん輔師匠です。早い上がりで持ち時間も少ないようで、軽いマクラの後すぐに本根多に入りました。お店の女将さんが出入りの若い新吉におちょっかいを出す、ということで『紙入れ』でした。

次が三遊亭白鳥師匠、出囃子も「白鳥の湖」です。トレーニング用のジャージみたいな柄の黄色い着物です。これまで白鳥師匠はあまり見てこなかったのだが、きっといつもこんな出立で高座に上がるのでしょうね。林家彦いち師匠も同じようなのを着ていたような。。。

演目はもちろん創作で、きっと『白衣の天使』という演題ではないかな。みどりちゃんという凄い看護師が登場します。

次が林家正楽師匠の紙切りです。いつも変わらぬ芸で、会場からお題をいただいてそれを切る。何でも切る。まず「相合傘」そして「師走」「サンタクロース」「羽子板市」「富士山」「スターウォーズ」。。。

次が隅田川馬石師匠、マクラも短く始めたのは『金明竹』。でも普通の「金明竹」ではなく、これも趣向を凝らしていました。馬石師匠はもともとは神戸出身ということで、関西弁は手馴れたものですね。

そして仲入り前は入船亭扇辰師匠。トリの金馬師匠の「芝浜」の前の根多選びの大変さを訴えたのでした。とにかく「芝浜」には大晦日、酒、魚屋、などいろいろなテーマがでてくるので、それを避ける根多選びが求められるその辛さ。

そして田舎弁の話から始まったのが初めて聴く噺でした。阿波国の田野村の久兵衛さんが宇和島に呼ばれて素人芝居公演に出かけた時に、母親の塩梅が悪くなって帰る途中、うわばみと遭遇。調べたら『田野久』という演目でした。珍しい噺です。

仲入りがあってその後は、にゃんこ金魚さんの漫才。相変わらず、羞恥心をかなぐり捨てた芸で、テーマはシェアハウスでした。

続いて春風亭一朝師匠の『看板のピン』。そろそろ最後の「芝浜」に向けて会場の空気を整えて行くような演出を感じたのです。

そしてトリ前が柳家小菊姐さんの俗曲。軽く都々逸などでご機嫌伺いの後ちょっと珍しい趣向。12月は赤穂浪士討ち入りの月なので、歌舞伎の仮名手本忠臣蔵を2分半で演ずるという。序段から十一段目まで、順番にそのキーポイントを並べて行きました。

そして最後が三遊亭金馬師匠の『芝浜』。これが鈴本12月中席夜の趣向です。10人の異なる演者の
「芝浜」、どれを聴きに行こうかと悩んだ結果、金馬師匠の日にしようと今日来たのでした。

金馬師匠は随分前から正座ができず、釈台を前に置いての高座です。釈台を置いて「芝浜」を演るのはあたしだけと自慢?していました。「スターウォーズ」より「芝浜」を選んできている人ばかりです。もう会場はすっかり聴く態勢ができています。

今日は初めの頃、後ろの方の席では紙袋のガサガサや、ひそひそ話が聞こえてきて、なんとなく落ち着かない空気だったのだが、もうそれもありません。金馬師匠のゆったりとした語り口に聴き入っていました。

大晦日の冷えるような空気の中、除夜の鐘が聞こえてくる。そして勝五郎が酒を前に「やっぱりやめとこう、また夢になるといけねぇ」。そのサゲの瞬間、会場が我に返ったのでした。

鈴本演芸場の会場を後に外に出たら、今年の暖冬とはいえ師走の夜はいささか冷えるのでした。

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