弥生の一人看板 蜃気楼龍玉 国立演芸場 3月13日(水)

今日の公演はちょっと変わった趣向です。かねてより三遊亭圓朝の作品の口演にこだわりを持っている蜃気楼龍玉さんが、『緑林門松竹(みどりのはやしかどのまつたけ)』という演目を通し口演で語ります。

五街道雲助一門にはユニークな高座名とユニークな芸風の人が目立ちますが、蜃気楼龍玉さんはその最たるもの。圓朝作の長講に挑戦をする中、今日聴かせてくれるのが圓朝初期の作品である「緑林門松竹」です。

今まで聴いたことのない噺でしたが、調べるとこれを高座に掛けていたのは昭和の名人と言われた林家彦六師、六代目三遊亭圓生師が双璧だったとのことです。先日亡くなった桂歌丸師匠も手掛けてたのでは?とググってみたが出てきませんでした。残念。

開場前に国立演芸場に着くと入場待ちの人で1階ロビーは人で溢れていました。龍玉さんはまだテレビにも出てこない中堅真打のはずだが、もうしっかりと自分のファンを掴んでるようです。それもミーハー的な落語ファンではなく、年配者が多いのです。

入場して着いた席は最後部から1列前。でも国立演芸場はそんなに広い会場ではないので、演者の顔の見える距離です。もっとも前列に福禄寿が来なければの話ですが。そして会場は7、8割の入りです。

しかしいつもの定席とは何か雰囲気が違う、下座からのお囃子は聞こえてこない。静かなものです。前座もいないようです。やがて二番太鼓が鳴って、すぐに開演でした。

今日は龍玉さんが仲入りを挟んで前半後半、約2時間たっぷりの独り語りです。開口一番の前座も出てこず、いきなり龍玉さんの本番が始まりました。そして侍が刀を手にした試し切りをしたくてたまらなくなるという話。マクラから何やら物騒な話が出てきます。

そうです今日の噺は実におどろおどろしいもので、殺し、殺し、殺しの連続なのでした。解説によれば龍玉さん芸の力でどれだけ人が殺せるかという挑戦だそうです。そして芸が生ぬるいと聴いてる観客にとって殺しが、殺しのように見えないとのこと。そして本ネタでは刀ではなく、「蒼白譽石(そうはくよせき)」という恐ろしい毒薬が次々と人を殺すのでした。

とにかくこの噺、登場人物に善人はいません。出てくる人物全てに悪人の所業。まあ圓朝作の長講はおどろおどろしいものが多いのだが、これは極め付きと言えましょう。でもここまで悪人が次々登場すると、物語としては面白くなってきます。

この話はこれまで演ずる人によって、圓朝の原作からかなり改編されたり、演題もずいぶんいじられたようです。そして今回のも本田久作氏による脚色とあるので、龍玉さんに合わせて話も構成されてるようです。

前半仲入りまでは「新助市譽石を奪う」の話が続き、医者の秀英の妾のおすわと息子と駆け落ちをして、その二人から仇討ちを返り討ちにして、手入れを受ける場面で終わりました。さあ、新助市はどうなったのでしょうか。。。

仲入りの後は場面が変わって、女占い師としてまたかのお関が登場します。そしてそのお関が惚れた小僧平吉が後半の主人公。そして無事生き延びた新助市も登場してきましたが、お関に毒殺され60両奪われる。

さらに「平吉天城に乗り込む」の場面もありました。ここで天城の道場に乗り込んで、またしても譽石を使って一門を含めて大量殺人。最後は平吉もお関に毒殺されて、お関も自分で譽石を舐めて死ぬというサゲでした。

でも調べるとこの話はまだ先があって、原作では平吉もお関もまだ生きていて「田舎の惨劇」という場で常陸国大宝へ行き、そこでまた譽石を使って村民を大量に殺害。

最後はこの二人服毒自殺という筋書きとのことですが、ここまで演ると2時間では収まりきれないのでしょう。この噺の原作は圓朝の口述速記のみということなので、以後に口演する演者にとっては改変の自由度の高い作品なのかもしれません。

聴いているといつの間にか、演じている龍玉さんが見えなくなって、圓朝ワールドに包まれるような気分でした。救いがない話、でも面白い。こんな今日の国立演芸場、蜃気楼龍玉独り語りのひと時でした。

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