完全通し狂言「仮名手本忠臣蔵」第1部 国立劇場 10月25日(火)

1025kanadehon011025kanadehon02今年は国立劇場開場50周年だそうです。それを記念して企画されたのが「仮名手本忠臣蔵」の通し狂言。でも今回は只の通し狂言ではない。10月、11月、12月の3ヶ月をかけて、序段から十一段目までを全てを上演する完全通し狂言です。まさに落語ファン必見です。

1025kanadehon04 1025kanadehon05落語根多の中に、「四段目」「七段目」「淀五郎」「中村仲蔵」というような噺があるが、これらは「仮名手本忠臣蔵」を題材にしたものです。なので「仮名手本忠臣蔵」を見ると見ないとでは、落語の芝居噺の楽しみ方の深さが全く違います。

それはともあれ、完全通し狂言というのも滅多には見られません。少なくとも歌舞伎を見始めてから10年、初めて見る企画です。これを全て見たらいつ死んでもいいというものです。

この公演をしている国立劇場には50周年の提灯がびっしり、そしてチケットをもぎってもらって入ると忠臣蔵グッズという具合で雰囲気を盛り上げてました。

まず今日は3回のシリーズの第一部、大序から四段目までです。そして今日の構成は、

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大序  鶴ヶ岡社頭兜改の場
二段目 桃井館力弥使者の場
同 松切りの場
三段目 足利館門前の場
同 松の間刃傷の場
同 裏門の場
四段目 扇ヶ谷塩冶館花献上の場
判官切腹の場
表門城明け渡しの場

そのうちに開演前のプザーが、あれっ、ちょっと早いぞ。国立演芸場では前座の出番なのだろうが何なのかな、と思っていると、定式幕の中央に現れたのがあの口上人形です。今日の出演の役者の名前を一つ一つ紹介。特に重要な役柄には咳払いをして二回名前を言う。これは仮名手本忠臣蔵の時の細かいしきたりの一つだそうです。

1025kanadehon06それ以外にも忠臣蔵独自のしきたりが沢山あります。やがて定式幕が開くのだが、その開き方が独特。大序の「鶴ヶ岡社頭兜改めの場」の最初の場面は、このゆっくりした幕開きから始まりました。これもそのしきたりの一つだそうです。

舞台のひな壇に並んでる面々はこの忠臣蔵劇の重要人物。でも動きがない。これは原作の人形浄瑠璃に敬意を表した、人形の仕草だそうでした。まさにここは歌舞伎の形式美そのものの演出でした。

衣装は江戸時代ではない鎌倉または室町時代、そうなんです。歴史的事実は元禄時代の事件だったのが、当時の江戸幕府はこのような根多を扱うことを禁止していた。そこで作者は徳川幕府ではなく足利幕府の統治の時代にして、幕府の取り締まりを逃れたのです。

ここで吉良上野介ではない、高師直(市川左團次/高島屋)とその隣に浅野内匠頭ではない、塩冶判官(中村梅玉/高砂屋)。それにしても高師直の憎たらしい表情。

そこに兜改のために塩冶判官の奥方、顔世御前(片岡秀太郎/松嶋屋)が現れる。それに横恋慕する高師直。そして師直からの嫌がらせで頭に血が上ってる桃井若狭之助(中村錦之助/萬屋)。序段はこの3人の凌ぎ合いでした。

続いて二段目。滅多に上演されない段です。でもこの段では当初高師直と対立してたのが桃井若狭之助だったのが、何も知らない塩冶判官が間の悪い時に居合わせて争いに巻き込まれ。やがて高師直からの嫌がらせを受ける、その経緯でした。そのきっかけが若狭之助の家臣の加古川本蔵が師直に渡した賄賂。逆に顔世御前から師直に当てた文がきっかけで、師直の憎しみの対象が塩冶判官に移るという下りでした。

このような説明的な場面の連続ということで、通常の通し狂言でも割愛されることの多い段なのではと感じた次第。

35分の幕間の後三段目。いよいよ塩冶判官が高師直に斬りかかる刃傷の場面。温和な塩冶判官も度が過ぎた高師直の嫌がらせに堪忍袋の緒が切れたのでした。「殿中でござる!殿中でござる!」

後は罪人扱いされる塩冶判官と、その場に居合わせなかった勘平とお軽の逢引劇の発端もこの段で仕込まれていました。物語からゆけば「道行旅路の花聟」が次の四段目の前になるのだろうが、実際は演出効果の事情で五段目の前になったようです。

忠臣蔵の物語の最初のハイライトとなる場面なので、実に長い、1時間40分の幕でした。

そこで20分の幕間の後四段目。ここが落語根多にも多く取り上げられる段。判官切腹の場面です。あの「由良之助、待ちかねた〜〜」。

でも切腹の前に「花献上の場」があり、顔世御前が気落ちした主君を慰めるための桜を活ける場面。これも滅多に演じられない場のようです。

それにしてもこの段の空気の重苦しいこと。場内は演出効果のために始まってから50分が場内出入り止め。お囃子方の三味線太鼓も少ない。浄瑠璃の語りもない。静寂が支配する中、判官が九寸五分の刀で腹を切る。そこに大星由良之助(松本幸四郎/高麗屋)が現れて、判官が「由良之助、待ちかねた〜〜」。

そういえば落語の「淀五郎」ではこの場面で、澤村淀五郎の演ずる判官の演技が下手だと言う理由で、由良之助が判官の傍に行かないのです。現代ではそんなことはないだろうが、お江戸の昔はあったのかな。
この後は家臣一同での弔い。焼香で本物の香を炊いたのでしばらくしたら、客席にもほのかな香りが漂ってきました。

その後主君の遺言を聞いた由良之助が仇討ちを決意する。そして城明け渡しに対して血気に逸る若い家臣たちをなだめて取りまとめてゆく場面。

菩提寺から帰ってきた家臣が花道に並んで叫ぶ、それを由良之助が絞り出すような声でなだめるやりとり。これが緊張感の中で続いたのでした。

最後は住み慣れた城の表門が次第に遠ざかってゆく演出て終わりました。これで今日の公演、第一部の終了で、続きは11月になります。

1025kanadehon07時間も長かったがその長さをあまり感じさせない。実に見応えのある第一部でした。

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