團菊祭五月大歌舞伎 昼の部 歌舞伎座 5月11日(金)

今日は久しぶりの歌舞伎座です。お目当は市川海老蔵(成田屋)さん。今月の公演は昼夜の二部構成ですが、昼の部は海老蔵さん一人五役という、まさに超人的な役回りです。そして夜の部は尾上菊五郎さんと音羽屋の出番です。

團菊祭というのは毎年五月にやっているが、起源を辿ると明治時代の九代市川團十郎と五代尾上菊五郎の功績を称える吉例公演だそうです。そう言えば12代市川團十郎沒周年ということです。なので成田屋の看板を支えるの海老蔵さんが、昼の部はは主役以上の存在です。

         

やはり海老蔵人気はただならないものがある、開演30分前に着いたら歌舞伎座の周りは人がいっぱい。入場したら大部分の席は埋まっていました。そして座った席は二階席の最前列。役者との距離は少し遠いが、花道はしっかり見える席です。何といっても前の席に福禄寿のような人に座られることを心配する必要もない。

今日の演目は、通し狂言『雷神不動北山櫻』。この狂言の中の、二幕目が「毛抜き」、そして三幕目が「鳴神」として、歌舞伎十八番として単独で上演されているものでした。そうか、これが海老蔵さんが一人五役を演る背景なんだな。

そして今日の構成は

『雷神不動北山櫻』時は平安時代です
口上  市川海老蔵
発端  深草山山中の場
序幕  大内の場
二幕目 小野春道館の場(歌舞伎十八番「毛抜き」)
三幕目 第一場 木の島明神境内の場
三幕目 第二場 北山岩屋の場(歌舞伎十八番「鳴神」)
大詰  第一場 大内塀外の場
大詰  第二場 朱雀門王子最期の場
大詰  第三場 不動明王降臨の場

その五役というのは、早雲王子・安倍清行・粂寺弾正・鳴神上人・不動明王。それぞれが性格の異なる人物役。海老蔵さん休む暇もない変わり身です。そして舞台の上での早替わりもあるということです。

開演してまずは口上。幕が開くと舞台の中央に赤毛氈と座布団、そこに海老蔵さんが深々と頭を下げて座っていました。そして開口一番の口上、その中で今日の演目の『雷神不動北山櫻』の紹介説明、その中での五役の事も話していました。背景にはその五役の肖像が。

口上が終わってセリが下りて、まずはこの狂言の発端です。いきなり立ち回りでした。海老蔵さんまず、天皇になりたい野心を持つ早雲王子で登場、この狂言最大の悪役です。それが鳴神上人をそそのかして、龍神を封じ込めて日本中に雨が降らないようにする。旱魃が起きる。これがこの狂言の一つのテーマでした。

次の序幕では軟弱な安倍清行、100歳を超えた色事師役でした。旱魃に悩む百姓に請われて現れた早雲王子に早変わり。てもその早雲王子は百姓の心を掴むいい子になってしまいました。

ここに出てくる「ことわりや」の短冊には、小野小町の歌が詠み込まれてる、それは雨乞いの歌。「千早ふる神もみまさば立ちさばき天のとがはの樋口あけたまへ」と説明されていました。でも調べてみると「ことはりや日のもとなればてりもせめさりとてはまた天が下とは」という歌の方が多く伝わってるようです。

第二幕は、成田屋の歌舞伎十八番として有名な「毛抜き」の場面です。ここでは海老蔵さん、文屋豊秀から小野春道館への使者、粂寺弾正として登場しました。ここでは磁石によるマジックでが出てきます。錦の前の姫の髪飾りの磁石で、姫の髪が逆立つ。そして暇つぶしをしていた弾正の毛抜きが宙に浮く。このからくりを弾正が見抜くというくだりでした。

第三幕目は、これまた歌舞伎十八番の演目「鳴神」で、この幕の見せ所は、清廉潔白な修行僧だった鳴神上人が、雲の絶間の姫(尾上菊之助/音羽屋)の色香に取り込まれて、生臭坊主に転落し、さらに騙されたことを知った怒りで、鬼神に変貌するところでした。ここでも海老蔵さんは後見の手助けを受けながら、早変わりそして早変わり。

この雲の絶間の姫とは、関白基経が鳴神上人を陥れて、雨を降らせるために派遣したハニトラだったのでした。鳴神上人の寝ている間に、滝の岩と岩を結ぶ注連縄を切って龍神を解放。雨が降り始めました。

それにしてもハニトラというのは古今東西、敵を陥れる手段としては有効なんですね。今世間を賑わすスキャンダル。助平な高級官僚が、メディアのセクハラを装うハニトラ取材で陥れられた事件と重なってしまいました。

大詰めは早雲王子の最後の場。悪事の露見した王子を捕らえようとする捕り方との、実に派手な立ち回りでした。でも王子は強い。捕り方は次々にトンボを切って倒れる。でもまた生き返る。

花道の上で木遣りの梯子乗りのような芸。舞台装置の2メートル位の高さから、もんどり打って飛び降りたり。失敗して怪我しやしないかとハラハラしながら見てました。

そうかと思えば、王子と捕り方が交錯して、梯子と縄で成田屋の三枡紋を作ってみたりなど、魅せどころ満点。そして衣装も平安時代には考えられないもの。こんな時代考証クソッ喰らえの演出も歌舞伎の面白さです。そして最後に早雲王子は捕り方に捕らえられるのではなく、不動明王の天の声で成敗されたのでした。

大詰め、最後は不動明王の降臨。真っ赤な照明に染まった舞台に現れて、剣を持って森羅万象正しい道に導く教示をしたのでした。勿論この役も海老蔵さんで、本当に最初っから終いまで、出ずっぱりの忙しい舞台でした。

ここで今日の公演は全て終わったと勘違いしたら、実はもう一つ残ってました。それは舞踊の『女伊達』、木崎のお光さん。それが滅法強いのです。

演じるのは中村時蔵(萬屋)さんで、喧嘩相手の男伊達が中之島鳴平(中村種之助/播磨屋)と淀川の千蔵(中村橋之助/成駒屋)。

二人の男伊達を追い払いながら、理想の男伊達、花川戸助六を想うという歌と舞踊でした。

これでようやく終演です。でも今日の公演は実に話題豊富。さらに夜の部には音羽屋の舞台が待っているが、今日はここまで。

折しも成田屋の屋号の由緒である、成田山新勝寺の御本尊の不動明王の像がご開帳されてました。勧進を募ってたので、幕間にお参りしたのでした。

あとこの團菊祭のテーマとして、平安時代の六歌仙にまつわる話を出してゆくというものがあり、まず小野小町だったのです。六歌仙の中には文屋康秀が入ってるのだが、今日出てきたのは文屋豊秀でした。そして夜の部には喜撰法師が出てきます。

ということで楽しんただけでなく、知識的な欲望も満たしてもらって歌舞伎座を後にしました。

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