古典落語を聴く「桂藤兵衛会」飯田橋富士見区民館 12月23日(金)

今日は天皇誕生日、明日はクリスマスイヴ、明後日はクリスマスという具合で、いよいよ年の瀬も押し迫ってきました。そんな中、今日足を運んだのは桂藤兵衛師匠の独演会です。

この会の趣旨は珍しい噺を掘り出して聴かせてみる。藤兵衛師匠自身が噺を蔵出ししてその手応えを確かめて、今後の持ちネタにしてゆくというものです。そこで根多出しされていたのは「あかんべ」と「唐傘桜」。聞いたこともない話です。ネットで調べても情報は全くありません。「あかんべ」なんというと、蒟蒻問答が思い出されるが、この別名なのかなとも思ってしまいました。

会場は飯田橋駅から少し奥まったところにある、千代田区富士見区民館の普通の会議室でした。ビジネスセミナーでもやるような会場です。そこでいつもの伝承話藝を聴く會のメンバーが準備をしてました。そして白板に今日の番組が書かれていました。

高座は立派に設えてあるものの楽屋もない会場で、藤兵衛師匠は何と会議室の陰で着替えをしてたのです。藤兵衛師匠、やがて開演時刻の14時ぴったりに、高座に上がり開口一番です。どうやら根多出ししてた以外のものも聴かせてくれるようです。

伊勢屋の旦那の葬儀に、無筆の甚兵衛さんと源兵衛さんが帳面付けを頼まれた。これは聞いたことのある話だがと、帰って調べたら『三人無筆』のようです。でも盛んに伊勢屋の旦那の遺言と言ってたので『遺言』という題でもおかしくない。ともあれあまり聴く事のない噺でした。

次が根多出し演目で『あかんべ』。「蒟蒻問答」とは似ても似つかぬ別の話でした。江戸の芸人が旅に出かけて、立ち寄った地で稼ぎながら西へ。九州の佐賀藩まで行った時に、そこのお殿様に呼ばれてお座敷へ。本来はお姫様に面白い話を聞かせて欲しいと呼ばれたものだったが、待ってる時間に御殿女中腰元たちを「あかんべ」と脅かす。そんな筋書きでした。

続いては『唐傘桜』、これは浪曲の「花見心中」から取ってきたとのことです。向島の花見所に、「唐傘桜」と呼ばれる一際立派な桜がある。その桜の下で首吊りをしようとした商人の利兵衛と、心中しようとした侍とが再会する話。泣かせる人情話でサゲはありませんでした。

これが終わって仲入り、というかトイレ休憩になったが、藤兵衛師匠は高座から下りずに観客に芸談を話してくれていました。この二題は根多おろしだそうで、まず高座に掛けてみて手応えを見ながら完成させてゆくものだそうです。あまり目立たない時代考証なども裏を取りながら組み立ててゆくもので、噺根多として完成するまで三年くらいかかるという事でした。このような噺作りに藤兵衛師匠のこだわりが感じられたのです。

そして最後はあるレベルまで完成された噺として、『徂徠豆腐』を聴かせてくれました。この根多は入船亭扇辰師匠など、何人かの噺家さんが高座にかけていたのを聴いていましたが、今日の藤兵衛師匠のは少し違いました。それは噺の中に赤穂浪士討ち入りの場面が入っていました。

後から師匠に直接尋ねると、多くはこの討ち入りの場面は省略するとのことでした。でもこれがあるからこそ、この噺の季節は年末のという具合に特定されるのですね。

こうして今日の桂藤兵衛師匠の独演会はハネました。でも珍しい噺や、噺作りの工程など、普段聞く事のできない興味深い情報を得ることができました。その意味で大変聞き応えのある会でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください