初春歌舞伎公演「通し狂言 しらぬい譚」国立劇場 1月24日(火)

時代と場所は江戸初期の北九州、大分、博多、京、そして天草四郎の島原の乱のあっ長崎あたりが舞台です。その物語は江戸時代の長編小説「白縫譚」を題材に、筑前黒田藩のお家騒動に焦点を当てた構成になっているっているとありました。その原本である絵入り長編小説「合巻」の中でも、「白縫譚」は最長編だったそうで90編にも及んだとあります。
それをぎゅっと抜粋して縮めて今日の台本となり、その中には島原の乱の首謀者の天草四郎と思しき、七草四郎なる人物もでてきます。

今日は開演が12時丁度、終演は16時前って事はあまり長くない。それで5幕と言う事は、先月の仮名手本忠臣蔵のような、重苦しいものではなさそうです。そして今日の構成は:

———— 尾上菊之助筋交いの宙乗り相勤め申候 ————
発端        若菜姫術譲りの場
序幕(筑前)    博多柳町独鈷屋の場
二幕目第一場(筑前)博多菊池館の場
第二場    同 奥庭の場
三幕目   (筑前)博多鳥山邸奥座敷の場
四幕目第一場(京) 錦天満宮鳥居前の場
第二場(京) 室町御所の場
大詰    (肥前)島原の塞の場

     

さて開演になったが空席が目立ちます。菊五郎さん、やはり地味目なのかな。まず発端の場は海の底。釣鐘が沈んでいる。そこに海女すずしろが舞台の上から宙乗りで降りてきました。それが後に大友宗麟の娘の若菜姫(尾上菊之助/音羽屋)となるのでした。

突然豊後の山中にワープして、土蜘蛛の精(坂東彦三郎/音羽屋)から身の上を教えられ、妖術を授けられ、親の仇菊池政行を倒す敵討ちを誓う場でした。そこからはまさに奇々怪々の連続。若菜姫はいろんなものに化けるのです。

序幕「博多柳町独鈷屋の場」では七草四郎なる、天草四郎を模した美少年の侍。でも剣の腕が立つ。そして遊郭で豪遊している国主菊池貞行(坂東亀三郎/音羽屋)に気に入られてしまい、家臣に取り立てられる。それが実は若菜姫の化けた姿でした。

そこで主役の鳥山豊後之助(尾上菊五郎/音羽屋)が登場します。さすがに風格を感じさせる菊五郎さんです。ここでの見せ場は豊後之助が七草四郎に、花形の鏡の由緒を問う問答。もともと七草四郎に疑念を抱いてた豊後之助は偽の鏡を渡したのでした。

やがて「博多菊池館奥庭の場」で七草四郎の正体が明かされて、鳥山秋作(尾上松緑/音羽屋)との立ち回り。そこで蜘蛛の糸を巻いて回り、最後に赤い糸を。それが蜘蛛の毒で秋策はそれに絡まれて病の床に着いたのです。

その間の立ち回りで、妖術で家臣を翻弄。翻弄された状態が軽業で魅せたのでした。トンボを切ったりバック転あり。若手の役者の身体能力の見せ所でした。

そして逃げのびた若菜姫は正体を見せて、今日の最大の見せ場である「筋交いの宙乗り」で下手の前から現れて、上手の二階座席の奥に消えてゆきました。宙乗りで上がったり下がったり、そして蜘蛛の糸を客席に撒きながらの熱演で観客を喜ばせる演出でした。幕間になったら客席は蜘蛛の糸だらけ、これを客席の係りの職員が一生懸命片付けていました。

次の場面は三幕目「博多鳥山邸奥座敷の場」ここでは秋作の病を看護する乳母の秋篠(中村時蔵/萬屋)の、秋作への偏愛。それは実は自分の命をかけての忠義だったという展開です。自分の実の子の瀧川小文治(坂東亀寿/音羽屋)に自分を討たせて、その血を秋作に飲ませるとたちどころに病が治って元気いっぱいになる。本物の花形の鏡を持って京へ。その後秋作の大活躍が待っていました。この幕では若菜姫は一休みです。

次の場面は四幕目「錦天満宮鳥居前の場」、ここに蕎麦屋の「正月屋」。そうです、まだこの公演は正月公演なのです。そこに稽古屋の師匠お春が現れます。これも若菜姫が化けたものでした。さらに正月屋の娘お照に化けたりと。目くらましの連続だったが、やがて見破られてお照(中村梅枝/萬屋)を拐かして花道に消えてゆきました。そのお照は、実は秋作の許嫁の照葉でした。

次の「室町御所の場」は今日の奇々怪々のクライマックスです。まず元気な秋作と化け猫の分身との立ち回り、その後巨大な化け猫が出てきました。

一度は化け猫に花形の鏡を奪わて絶体絶命の秋作、しかし助太刀の雪岡多太夫(市川團蔵/三河屋)から銀の槍を受け取ったのです。その銀の槍の先が光った!まさにスターウォーズの乗りです。それで化け猫退治をして花形の鏡を取り戻しました。

そして大詰め「島原の塞の場」では舞台が肥前島原に移り、若菜姫に拐かされた照葉の救出劇です。その開始時に再び若菜姫の宙乗りがありました。今度は上手の2階席後ろから下手の花道まで。

舞台は海の見える海岸の要塞で、再び若菜姫が妖術を駆使して抵抗。そこに鳥山豊後之助が足利将軍や菊池家一族が現れて、花形の鏡で若菜姫の妖術を封じたのです。

でもこの劇は勧善懲悪の幕切れではありません。若菜姫の遺恨の元であった親の仇である菊池政行の非道を、息子の貞行が詫びて所領の豊後国を返還する。それで大友家との和解が成立して、舞台が満開の桜の場面に変わって天下泰平の正月にふさわしい幕切れになりました。

劇の筋書きは緊張感のあるものだったが、それよりも肩の凝らない娯楽的な見せ所の多い公演でした。

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